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夕陽に照らされた太陽の塔。万博記念公園の深い緑の向こうに白い塔が浮かび上がる。
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車窓の色彩――関大前から南千里へ

阪急千里線の北千里行き電車が南千里駅に停車している様子。

南千里駅に停車する阪急千里線の北千里行き。ここから千里ニュータウンを歩く旅が始まった。—Journal-ONE撮影

大阪の都市が放つ熱気を背に、阪急千里線のマルーン色の電車に身を任せる。車窓というものは不思議な額縁だ。切り取られた景色というだけで、ただの日常の一コマさえも、どこか特別な光を帯びて見えてくる。関大前駅に近づいても、そこに広がるのは、古本屋や小さな飲食店が過密にひしめく雑多な学生街の情景ではない。都心の喧騒から遠く離れ、豊かで静かな緑と落ち着いた住宅街の中にキャンパスがそっと抱かれている。線路一本を隔てた向こう側には、きっと賑やかな学生の街が広がっているのだろうが、この額縁の中に、その喧騒はいっさい映り込んでこない。

阪急千里線のマルーン色の車両。北千里行きの列車がホームに停車している。

阪急千里線のマルーン色の車両。大阪の街を離れ、千里ニュータウンへ向かう旅が始まった。—Journal-ONE撮影

平日のホームはどこもしんとして静かだ。電車が滑り込んでドアが開いても、乗り込んでくるのは、ひとり、またひとりと現れる学生たちだ。それでもドアが開くたびに、車内には瑞々しく弾む会話の欠片が舞い込んでくる。窓の外に目をやれば、ガラス越しに降り注ぐ真夏の強い陽射しが、住宅街の屋根と深緑の樹々を鮮烈に照らし出している。ジリジリと肌を刺す光陽光の粒子。遮光カーテンの隙間から滑り込む光に眩しさを覚え、思わず目を細める。

緑の誘いと、木立ちに灯る橙色の光

南千里駅前の街路樹と住宅街。豊かな緑の背後にニュータウンの高層住宅が並ぶ。

南千里の街に降り立って最初に驚いたのは、建物ではなく緑の量だった。—Journal-ONE撮影

南千里駅周辺から南千里クリスタルホテルのあたりへと足を踏み入れると、まず圧倒されるのは街路樹の尋常ならざる豊かさだ。空へと威風堂々と枝を広げたフウの巨木に、涼やかな針葉を密に茂らせた赤松と黒松の木立ち。

見た目の涼しさに誘われて指先でそっと触れてみると、思いのほか硬く、鋭く尖った先端がちくりと痛みを残す。晩夏のこの時期、葉はもう十分すぎるほど乾いて、頑固に育ちきっているらしい。植えられた時代も由来もそれぞれに異なるのだろう、二種の松が混じり合いながら育つ様が、この街が幾度も手を加えられながら緑を積み重ねてきた歴史をそのまま物語っているようだった。

南千里の街路樹と松林。その奥に千里ニュータウンの高層住宅が見える。

「街路樹の尋常ならざる豊かさ」。ホテルの窓から見えたのは、住宅地よりも先に広がる緑の層だった。—Journal-ONE撮影

都市のコンクリートを覆い隠す緑の層はまことに見事なのだが、見上げればその隙間から覗く空は恐ろしいほどに青く、太陽は遠慮というものを完全に忘れて容赦なく照りつけている。

頭上からは、クマゼミたちの「シャンシャンシャン……」というシャワーのような大合唱が止み間なく降り注ぐ。猛暑のテンションをどこまでも無駄に煽り立てる、あまりに重厚で賑やかな立体音響(BGM)だ。そこへ、ツクツクボウシまでもが「ツクツクボーシ!」と歯切れよく合いの手を入れてくる始末である。アスファルトからはゆらゆらと熱気が立ち上り、一歩踏みだすごとに肉体がじわじわと蒸し焼きにされていく感覚がする。

ホテルを出て、当初の目的地である竹見台マーケットを目指そうと志だけは高く踏み出したものの、直撃する白日の光線に数秒で意地が砕け散った。ここでへたに張り切って大股で歩こうものなら、一瞬で全身の汗腺が全開になり、無駄に体力を消耗して路上で果てるのが目に見えている。私はとっさに「生きものとしての省エネモード」へと切り替え、まるで歩幅を測る亀のように、ゆっくり、ゆっくりと足を運ぶことにした。時折、そよ風というには些か気合の入りすぎた突風が時折り吹き抜けては、日傘を握る手をぐらりと持っていく。涼をくれるはずのその風さえ、今日ばかりは味方なのか敵なのか、にわかには判じ難い。

千里南公園、緑の迷路へ

だが、この灼熱の太陽の下で歩行を試みること自体があきらかに無謀であった。限界を察知し、たまらず避暑を求めるように、緑の影がより濃く立ち込める千里南公園の方角へと吸い寄せられていった。

千里南公園の牛ヶ首池沿いに続くメタセコイア並木。池と雑木林に囲まれた静かな遊歩道。

牛ヶ首池のほとりに続くメタセコイア並木。その奥にはニュータウン開発以前から残る雑木林の気配が漂っていた。—Journal-ONE撮影

■記者プロフィール
編集部-小谷
ナイトランが好きなインドア派。旅と朝カフェ、鮮魚コーナーを愛するJournal-ONE編集部員。メーカーでのアートディレクター・商品企画を経て、気づけばメディア運用側へ。
取材・文:
編集部- 小谷( 日本 )
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