白球を追う真剣勝負
肌寒さを感じ始める9月13日、東京ドームは異様な熱気に包まれていた。2万5千人の観客がスタンドで見守る中開催されたのは、「SATO presents 高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」。野球界のレジェンドたちが勢揃いする夢のような一戦。しかし、「お祭り騒ぎ」のような緩さは一切ない。そこにあったのは、互いのプライドとリスペクトがぶつかり合う、紛れもない「本気の勝負」だった。
女子高校野球の認知度向上と発展を願って始まったこの取り組み。それも今年で6回目を迎えた。回を重ねるごとに試合内容は洗練され、選手たちの技術レベルも飛躍的に向上している。この日も、試合前のシートノックから見せた女子選抜チームのハキハキとした掛け声がドームに響き渡る。そして選手たちの引き締まった表情が、非常に印象的だった。

年に一度の女子野球の祭典が始まったージャーナルワン撮影
今年を彩った女子高校野球の選手たち
今回、東京ドームに集結した女子高校球児20名。その中に今年を彩った選手たちがいた。8月1日に行われた第30回全国高等学校女子野球選手権大会の決勝。そこで見事日本一に輝いた神戸弘陵高校の3名だ。チームを主将として牽引する山戸 優菜選手、1番打者として攻守でチームを盛り立てる福田 稟選手。そして夏の決勝戦で先制打を放った西垣 美来選手だ。

校歌を歌う神戸弘陵学園の選手たちは憧れの存在だ-Journal-ONE撮影
この神戸弘陵のメンバーが、この日の東京ドームでも大活躍を見せることになる。
レジェンドたちの本気に立ち向かう
試合開始早々、投手・イチロー氏を攻略したのは1番の福田選手だった。カウント1ストライク1ボールからの3球目、足元を抜ける中前打を放つ。一塁に到達した福田選手は、憧れのイチロー氏からのヒットを全身で喜んだ。
これまでの対戦でも一切手を抜かず、真剣勝負を挑んできたイチロー氏。しかし、いとも簡単に中前へ弾き返した福田選手を見て「今年はやばいぞ…」と危機感を覚えたという。さらに福田選手は直後に盗塁を試み、見事に成功。試合開始早々から大物ぶりを発揮した福田選手に、会場からは大きな拍手が送られた。

イチロー氏から盗塁も決めた福田選手-Journal-ONE撮影
続く3番の西垣選手は、イチロー氏の変化球に打ち取られて惜しくも内野ゴロに。甲子園で行われた夏の決勝戦をチェックしていたというイチロー氏。そんな打撃好調な西垣選手を警戒してきっちり抑え込み、初回を無失点で切り抜けた。
マウンドでも山戸が見事な立ち上がり
攻守が交代した1回裏、女子選抜の先発マウンドに立ったのは山戸投手だ。キャプテン、そしてエースとしての存在感を発揮し日本一に輝いた立役者。しかし、この試合のKOBE CHIBEN打線にはイチロー氏をはじめ、松井 秀喜氏や松井 稼頭央氏といった豪華なレジェンドたちが名を連ねている。
誰もが緊張する場面だが、山戸投手は違った。1番・イチロー氏を遊ゴロに打ち取ると、3番・松井 稼頭央氏も凡打に抑えて三者凡退。「去年、先発マウンドに立った先輩の阿部さくらさんと同じく『絶対にゼロで抑える』という強い気持ちで上がりました。イチローさんが打席に立った時の威圧感は凄かったです。ですが『やってやるぞ』と思って投げました」と笑顔でベンチへ戻っていった。

神戸弘陵の柱、山戸投手(左)と福田選手-Journal-ONE撮影
夏の大会決勝を見ていたイチロー氏も「今年の女子野球のレベルを知ろうと思って試合を見ました。その時、山戸投手の得意球であるスライダーが本当に素晴らしかったです。これまで対戦してきた投手の変化球と違って軌道を見る時間がなく、打ちづらい球でした」と絶賛した。
福田選手の連打で沸く東京ドーム
KOBE CHIBENが1点リードして迎えた3回表。ここまでで肩が温まってきたイチロー氏は、約15km/hの緩急をつけた直球と変化球を織り交ぜてアウトを積み重ねてきた。しかし女子選抜の打順が1番に回り、再び福田選手が打席に入ると顔つきが一気に変わった。しかし、福田選手はここでも右前へ鋭い打球を放ち、マルチ安打を記録。一塁上で女子野球ならではのパフォーマンスを披露し、球場を沸かせていた。

















