神戸弘陵が、“無冠世代”と呼ばれてきた3年生たちの覚悟をグラウンドで証明した。
7月20日に行われた第30回記念全国高等学校女子硬式野球選手権大会2回戦。神戸弘陵学園は広陵(広島)を9-0の5回コールドで下し、2年ぶり5度目の頂点へ向けて力強い第一歩を踏み出した。

ベンチ外の選手を含め93人で初戦突破した神戸広陵-Journal-ONE撮影
“無冠世代”が迎えた最後の夏
全国屈指の戦力を誇りながらも、優勝旗にはあと一歩届かなかった。
神戸弘陵学園の3年生たちは、秋のユース大会、春の全国高等学校女子硬式野球選抜大会と、悔しさを味わい続けてきた。
それでも、下を向かなかった。部員38人。誰一人欠けることなく最後の夏を迎えたからだ。
主将でエースの山戸優菜は、試合後も浮かれる様子を見せなかった。
「明日も登板するので、先ずはしっかりとケアしたい」。
その言葉の裏には、主将としての責任感がにじむ。前日に行われたミーティングでは、38人の同級生たちと改めて思いを共有したという。
「私たちの代は38人の部員がいます。誰一人欠けることなく、最後の大会まで来ました。だから全員で絶対に優勝を勝ち取りたい」。
ベンチに入れなかった仲間もいる。スタンドから声を枯らした仲間もいる。それでも38人は同じ夢を追い続けている。
山戸優菜の投球には、その思いが込められていた。

怪我を克服し力投する神戸広陵のエース・山戸-Journal-ONE撮影
様々な思いを胸に迎えた全国選手権
無冠世代と呼ばれてきた3年生たちだけではない。このチームには、それぞれの立場で全国選手権に懸ける思いがあった。
春の悔しさを忘れられない選手。最後の夏を少しでも長く続けたい選手。そして、その背中を追い掛ける後輩たち。
春の選抜大会ではエース山戸優菜が肩の痛みを抱えながら投げ続けた。本来の力を発揮できず、チームもベスト4で涙をのんだ。しかし、その悔しさが神戸弘陵学園を強くした。
山戸はフォーム改造に取り組み、制球力の向上に取り組んだ。チーム全体も守備力と走塁意識をさらに磨き続けてきた。その成果を証明する舞台が、今年の全国選手権だった。
序盤から主導権を握った神戸弘陵学園
主将・山戸優菜と福田稟が呼び込んだ最高の立ち上がり
試合の流れを決定付けたのは初回だった。名将・石原康司監督が夏制覇に欠かせないと話していた、「3年生の底力」が試合を動かした。
まずは主将でエースの山戸優菜がマウンドで流れをつくる。
初回、広陵の1番・吉田莉子を投ゴロに打ち取ると、続く福原杏里、川原琉夢を連続三振。わずか10球あまりで三者凡退に抑え込み、ゲームの主導権を引き寄せた。
その裏だった。先頭打者として打席に立ったのは3年生の福田稟。
試合後、「最後の大会ということもあり、第1打席は緊張しました。」と振り返った福田。しかし、その緊張を感じさせない鋭いスイングで右前打を放つ。
「春は私が出塁していれば勝てていたと思っています」。
春の悔しさを胸に磨き続けた打撃が、最高の形で実を結んだ瞬間だった。
続く石井望愛は送りバントを一発で成功。無死一塁から確実に走者を進めると、打席には3番・西垣美来。西垣はセンター前へ運び、神戸弘陵学園が幸先良く先制する。

ヘッドスライディングで執念の出塁を果たした福田-Journal-ONE撮影
神戸弘陵打線が打者一巡の猛攻 一挙6得点で主導権
さらに4番・島本そなが右前打で続くと、5番・浅水梨来が左中間を破る2点適時二塁打を放つ。
続く河井絢音も安打でつなぎ、7番・西山果穂が左前へ2点適時打。
最後は9番・永田悠風里が走者一掃の適時三塁打を放ち、この回だけで打者10人、7安打、一挙6得点の猛攻を見せた。
試合後、石原康司監督はこの初回の攻防についてこう評価した。
「初回の攻防は100点です。3年生を中心に集中力のある野球をしてくれました」。
主将・山戸が抑え、福田が出塁し、石井が送り、西垣と島本が返す。
神戸弘陵学園が理想とする“守備から流れをつくり、確実に得点へつなげる野球”が、そのまま形になったイニングだった。

副将として主軸としてチームをけん引する西垣-Journal-ONE撮影














