その後、福田選手は大きなリードでイチロー氏を揺さぶる作戦に。5球以上も牽制球を投げるイチロー氏の姿から、相当な警戒感がスタンドにも十分伝わってきた。

イチロー氏から3安打猛打賞の福田稟選手-Journal-ONE撮影
さらに6回表の福田選手の3打席目。先頭打者の彼女が放った遊ゴロに対し、遊撃手・松井 稼頭央氏がなんと悪送球。3打席連続出塁を果たした福田選手の活躍に、マウンドのイチロー氏も悔しそうな表情をのぞかせた。
そして8回表。第4打席で福田選手の名前がコールされると、ドーム全体から大きな拍手が巻き起こった。スタンドからの期待が高まる中、詰まりながらも三塁ベース後方へ上がった打球は、飛びついた松井 稼頭央氏の手をかすめて安打となった。
この瞬間、大歓声に包まれる場内。イチロー氏は「やられた」と言わんばかりの表情を見せていた。そして、試合後には「参りました(苦笑)。今までにないスターが生まれたなと感じました。そういう選手を迎えると嫌な空気が漂うが、彼女にはそれを持っている」と脱帽した。
憧れのイチローからの言葉に涙
福田選手も「イチローさんからそのように褒めていただけて本当に嬉しいです。イチロー選手と対戦できて世界一幸せでした」と嬉し涙を浮かべた。盗塁の場面について「走れると思って初球から行きました」と明かすと、イチロー氏が「軽くディスられている感じが気持ちいいね(笑)」と返し、会場の笑いを誘った。

イチロー氏から安打を放って全身で喜びを表現する福田選手ーJournal-ONE撮影
「現在、女子野球には133km/hを投げる選手もいると聞いて、投手イチローはそろそろ終わりかなと思っていました」と冗談めかすイチロー氏。それに対し、福田選手が「イチローさんのボールは、今まで見たことがないくらい伸びていました。この経験を糧に、もっと高いレベルで野球をして女子野球を広めていきたいです」と力強く宣言。すると、イチロー氏も「そう言ってもらえるとオジサンは嬉しい」と笑顔を見せ、温かいやり取りが交わされた。
数字以上のドラマ。見せた女子高校生の「意地」
試合は7-0でKOBE CHIBENの完封勝利。イチロー氏は先発として9回127球を投げ、17奪三振、最速136km/hを記録した。打撃陣でも松井 秀喜氏と松井 稼頭央氏がそれぞれ2安打1打点の活躍。しかし、スコアボードの数字だけでは測れないドラマがそこにはあった。

西垣選手もイチロー氏の球に全力で食らいつく-Journal-ONE撮影
女子選抜の選手たちは、レジェンドたちの鋭い打球や果敢な走塁に対しても諦めずに食らいつき、幾度となく好守を披露。特に内野陣は軽快なフットワークで併殺を奪うなど、日頃の厳しい練習の成果を存分に発揮した。
試合後のインタビューで、イチロー氏は女子選抜チームのプレーや姿勢に心からの賛辞を送った。
「まず、1年に1度のこの試合を今回も開催できたこと。それに尽きます。結果として点差は開きましたが、今回の選抜チームを見て、必死に準備をしてきました。でも『これは厳しいかもしれない』と正直ネガティブな気持ちになりました。こうしたメンタルでのアプローチで結果を出していく体験は初めてですね。長く野球をやってきた中で非常に勉強になりました」
単なる「胸を借りる」関係を超え、一人の野球人として認め合っている。だからこそ生まれるリスペクトの空間が、そこには存在していた。
つながる白球の絆と、女子野球の未来

イチロー氏もこの一戦で多くの学びを得たと言う-Journal-ONE撮影
「女子野球を盛り上げたい」という想いから始まったこのイベント。今や秋の風物詩となり、多くのファンに女子野球のレベルの高さと魅力を伝える最高の舞台となっている。
試合後、敗戦の悔しさをにじませつつも、憧れの選手たちと握手を交わす女子高校生たち。その表情には晴れやかな笑顔が広がっていた。彼女たちの一生懸命なプレーと一球への執着心。それは集まったファンだけでなく、これから野球を始める次世代の少女たちにとっても大きな夢と勇気を与えたはずだ。
イチロー氏:「この歳になって、ある程度の立場になり、人に頭を下げることがなくなりました。だからこそ、様々な人に頭を下げるこの機会に教育してもらえる幸せを感じます。何よりこの試合は女子野球を盛り上げるためのものです。これからもぜひ応援してほしいです」

















