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夕陽に照らされた太陽の塔。万博記念公園の深い緑の向こうに白い塔が浮かび上がる。
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あれほど容赦のなかった酷暑の空気が、夕刻の訪れとともにふっと和らぎ、どこからともなく心地よい涼風が肌を撫でていく。頭上ではクマゼミたちの「シャンシャン」という大合唱が響き渡り、夏の名残を惜しむように空間を満たしている。

西に傾いた太陽が放つ最後の陽光が、太陽の塔の白い肌と万博公園の広大な樹木を、鮮やかなオレンジ色に染め上げていく。生命の躍動を思わせるその濃密な橙色が、時間の経過とともに刻一刻と深みを増し、やがて群青色の空を背景に静謐な黒いシルエットへと溶けていく。光から影へ、鮮彩から影絵への美しいグラデーション。かつて未来を夢見た巨塔が魅せる夕暮れの表情の変化に、ただ言葉を失って見惚れていた。

夜のニフレル外観。背後にはOSAKA WHEELがライトアップされ、EXPOCITYの夜景が広がる。

日が落ちると、白い曲面を描くニフレルが静かに浮かび上がる。背後にはOSAKA WHEELが輝いていた。—Journal-ONE撮影

やがて完全に陽が落ちると、暗闇の中にニフレルの角のない白い建築がぽっと優しく浮かび上がり、背後にそびえる大観覧車(OSAKA WHEEL)の鉄骨が幾何学的な光の輪を描き出す。その奥のエキスポシティ全体が不夜城のように華やかに輝き始め、静寂の森と光の小宇宙が幻想的な対比をなしていた。18時を過ぎたこの時間、あたりを行き交うのは家族連れよりも、寄り添って歩くカップルの姿が目立つ。マジックアワーは、どうやら恋人たちにとっても特別な時間らしい。

せんちゅうパルへの帰還と、夜の調べ

すっかり夜の闇に包まれた万博記念公園駅から、再びモノレールに乗り、千里中央駅へと向かう。ところがこの車両、窓ガラスの半分がなぜかミラー仕様になっているらしい。外の夜景を目に焼き付けようと身を乗り出しても、映り込むのは黒々とした車内と、乗り合わせた見知らぬ人々の輪郭ばかり。理由はついぞわからずじまいだったが、景色を奪われたぶん、否応なく同じ車両に揺られる人々の気配をやけに近しく意識させられることになった。

私にとって、千里中央の街に足を運ぶのはこれが初めてのことだった。

南千里で出会った、緑深き近隣住区の静けさと生活の営み。そして万博公園で仰ぎ見た「太陽の塔」という、昭和の熱狂が生んだ未来の遺構。同じひとつの巨大な構想のもとで育まれたこのニュータウンの「都心(センター)」として、かつて燦然と栄えた街はいま、どのような姿で時を重ねているのだろうか。その現在地をこの目で確かめに行きたいという、静かな好奇心が胸の奥で小さくうずいていた。

千里中央駅からせんちゅうパルへ続く歩行者デッキ。夜の回廊を多くの人が行き交う。

千里中央駅からせんちゅうパルへ続く回廊。一日の仕事を終えた人々が家路へと向かっていた。—Journal-ONE撮影

モノレールを降り、改札を抜けると、そこには一日の営みを終えて家路を急ぐサラリーマンや学生たちの、温かな生活の波が揺れていた。その人波にそっと身を混ぜながら、初めて足を踏み入れ「せんちゅうパル」の夜の回廊へと歩みを進める。

視線を左へ遣れば、地上3階建ての重層的なアーケード街が間接照明の柔らかな光に浮かび上がり、その洗練された光の連なりは、奥に広がる高天井のセンター街へと吸い込まれるように続いていく。その回廊の途中には、円形2階建てベーカリーカフェが、待ち合わせ場所を示すように静かに佇んでいる。

千里中央の商業施設「せんちゅうパル」。夜の照明に包まれた回廊と円形ベーカリーカフェ。

千里中央の中心にある「せんちゅうパル」。円形のベーカリーカフェを囲む回廊には、一日の終わりを迎えた人々の足音が響いていた。—Journal-ONE撮影

そして、全国チェーンの見慣れたロゴが整然と並ぶ一方で、その隙間に、関東の人間には馴染みのない地元ならではの店の看板が誇らしげに灯りをともしている。それを見逃してなるものかと、一歩一歩、確かめるように看板を見上げながら歩く作業がなんとも味わい深く、愉しい。統一された大手企業の記号の隙間から、その土地特有の生活の匂いがふっと顔を出す。見知らぬ街のアーケードでローカル店を発掘していくこの歩幅の小さな宝探しこそ、旅人が味わえる格別の密やかな醍醐味なのだ。

昼間のあの酷暑をやり過ごし、ようやく身体の輪郭がほどけていくような安堵感。間接照明の温かなオレンジ色は、一日の疲労を抱えて歩く人々の肩の線をなんともいえず優しく撫でている。初めて歩く街の夜だというのに、肌に触れる夜気はしっとりと心地よく、妙に胸の奥がくすぐったくなるような居心地の良さがある。

千里中央のせんちゅうパル中央回廊。吹き抜け空間の手前にはS字型の木製ベンチが置かれている。

多層構造の回廊と柔らかな照明。1970年代に描かれた都市空間の面影が今も残る。—Journal-ONE撮影

■記者プロフィール
編集部-小谷
ナイトランが好きなインドア派。旅と朝カフェ、鮮魚コーナーを愛するJournal-ONE編集部員。メーカーでのアートディレクター・商品企画を経て、気づけばメディア運用側へ。
取材・文:
編集部- 小谷( 日本 )
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