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夕陽に照らされた太陽の塔。万博記念公園の深い緑の向こうに白い塔が浮かび上がる。
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奥の八百屋では、抱えきれないほど大きな段ボール箱から、玉ねぎが威勢よく積み上げられていく。豆腐店の軒先に目をやれば、木綿170円、絹ごし160円、嵯峨、田舎、170円均一で行儀よく並ぶ中、朝一取豆腐などは250円を主張していた。この潔い価格設定に、思わず唸ってしまう。

隣の惣菜台では、じゃこ天やかぼちゃ天が90円からと、こちらもなかなか気前が良い。奥では店主が涼しい顔で、次から次へと揚げ物を仕上げていく。

竹見台マーケットの惣菜店。店頭には天ぷらや揚げ物が並び、店内では調理が続けられている。

店頭に並ぶ天ぷらや惣菜。その奥では店主が黙々と揚げ物を仕上げていた。—Journal-ONE撮影

ふと片隅に目をやると、ちょこんと水ようかんの札があった。真夏のこの一角だけ、涼をひとり占めしているのが、なんとも可笑しい。

入り口近くで揚げ物を商っていたのは、七十代か八十代かと見紛うほどのご高齢の店主だった。奥からは、電話片手に店先へ出てきたおばさんが「お目当てのサイズのネギ、あれへんかったで」と誰かに律儀に報告する声が聞こえてくる。他愛もない、けれど何十年も変わらずここで繰り返されてきたのだろう日常の一片に、思わず頬が緩んだ。

隣接する市民センターらしき建物の壁面には、時代を感じさせるブロンズのレリーフがはめ込まれていた。おそらくは高度経済成長期、この場所がシンボリックな存在だった名残なのだろう。かつてこの市民会館には、どんな歌い手や俳優が招かれ、どんな催しに人々が詰めかけたのか。すっかり静まり返った壁の前に立つと、その面影だけがぼんやりと立ち上ってくるようだった。

建物の前の通りを見やれば、やはりここでも車の往来が盛んに行き交っている。静かな街の佇まいでありながら、しっかりと活気ある車社会の血流が脈打っているのだ。

太陽の塔の黄昏時と、灯りだす小宇宙

竹見台マーケットの静かな昭和の余韻を背に、次に向かったのは万博記念公園であった。目的はただひとつ、夕刻のマジックアワーのなかで佇む「太陽の塔」をその目に焼き付けるためである。

山田駅から大阪モノレールへと乗り換えるため、高架ホームの先頭へと進む。時計の針はまだ17時を回ったあたり。西日はなおも高く、真夏の眩烈な陽光が容赦なく降り注いでいる。

大阪モノレールの軌道と中央環状線。その先の森から太陽の塔が顔をのぞかせる。

モノレール軌道と中央環状線の先、万博公園の深い緑の向こうから太陽の塔が顔をのぞかせていた。—Journal-ONE撮影

モノレールの軌道と中央環状線に沿って、どこまでも伸びる万博公園の深い緑。その緑の隙間から、ひょっこりと顔を覗かせているものがあった。

太陽の塔だ。「なんだか、あれに似ている……」と口をついて出かけた言葉を、あわてて呑み込んだ。だが、遠くにあるその姿を見つめた瞬間、私の脳裏に、かつてアニメで見た、腕を広げた孤高の巨人のような佇まいがふっと重なり合っていたのは確かだった。

なぜなのだろう、と己の記憶のひだを紐解いてみる。ひとつは、左右にすっと広げた腕と、無機質でありながらどこか哀愁を帯びた、あの独特で異質なフォルムの類似だ。

大阪モノレールの車両と太陽の塔。万博記念公園の緑の向こうに1970年大阪万博のシンボルが見える。

大阪モノレールの先に現れた太陽の塔。半世紀を超えてなお、千里の風景を象徴する存在であり続けている。—Journal-ONE撮影

そしてもうひとつは、背負ってきた歴史の共通性に他ならない。かつて人間たちの「未来」への熱狂やテクノロジーの夢を一身に背負って誕生した産物でありながら、祭りの宴が終わり、半世紀という歳月が流れた今、生い茂る鬱蒼とした森に抱かれ、静かに時を止めているということ。文明の喧騒から一歩退いた場所で、青々とした樹海と同化しながら、人間たちの営みを黙して見守る「孤独な守護者」としての佇まい。その哀愁と密やかな畏怖が、遠くの緑の中に浮かぶ白い顔と完璧に合致したのだ。

モノレールに揺られ、万博記念公園駅へと降り立つと、なおも残る猛烈な熱気が襲いかかってきた。たまらず見上げた駅の天井からは、涼やかな冷気が勢いよく噴き出している。その冷気の白い煙の下で、途切れかけていた息を吹き返し、身体の熱をそっと鎮めた。

大阪モノレール万博記念公園駅。駅舎の天井から冷気が噴き出し、夕暮れのホーム前通路を冷やしている。

万博記念公園駅の通路に設けられた冷気設備。酷暑の夕方、ここがささやかな避暑地になっていた。—Journal-ONE撮影

駅から外へと歩みを進め、広場へ出ると、マジックアワーの到来を待つ静かな時間が始まりを告げる。太陽はまだ高く、空の青も濃いままだ。ここから日没まで、実に一時間半以上をこの場所で過ごすことになるとは、このときはまだ知らなかった。良い一枚は、たいてい、こうした気の長い足踏みの果てにしか撮れないものらしい。

■記者プロフィール
編集部-小谷
ナイトランが好きなインドア派。旅と朝カフェ、鮮魚コーナーを愛するJournal-ONE編集部員。メーカーでのアートディレクター・商品企画を経て、気づけばメディア運用側へ。
取材・文:
編集部- 小谷( 日本 )
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