静岡国際陸上は、今シーズンの日本陸上界の現在地と未来を映し出す重要な一戦となった。
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静岡国際陸上2026の開幕と大会環境
ゴールデンウィークの最中の5月3日。今年で第41回を迎えた「静岡国際陸上競技大会」が開催された。
会場は、静岡県袋井市にある小笠山総合運動公園エコパスタジアム。今秋には32年ぶりの日本開催となるアジア競技大会(アジア大会)が名古屋で開催される。その影響もあり、同大会での日本代表を目指す多くの有力選手が出場した。
朝からの地元の小中学生によるリレー競技などが終わると、本格的に大会が開始となった。
時刻はまだ11時ほどながら気温は摂氏26度。加えて、空を灰色の雲が覆っていたこともあり、蒸し暑い。エコパは最寄りのJR東海道本線・愛野駅からは徒歩で15分ほどの場所にあるが、丘陵地にあるためにその雲が流れていく速度も速く感じられ、気象条件も大会の間に移り変わっていった。

静岡国際陸上の会場となったエコパ‐永塚和志撮影
静岡国際陸上で生まれた日本新とトップパフォーマンス
落合晃が打ち立てた800m日本新記録
この日の主役の1人となったのは、男子800mで1分43秒90のタイムで日本記録を更新した落合晃だった。駒沢大の19歳は身長165cmと小柄ながら体幹のぶれない安定した走りで序盤から先頭集団を走ると、残り300mほどの地点から後続をどんどんと引き離していく。最後までスピードが落ちずにゴール地点を通過した落合はタイム計時盤で新記録を確認すると、右手を挙げささやかに喜びを示した。
昨年の大会などでレース後半のスピードに課題を残し、この冬には練習を積んできたという落合。高校時代の2024年に自らが出した従来の日本記録を0秒90も上回るタイムを叩き出した。

800M男子で日本新記録を打ち立てた落合-永塚和志撮影
世界を見据える落合晃の現在地と目標
もっとも、落合に浮かれる様子はなかった。昨年の東京での世界陸上に出場し、予選で日本人最高記録(1分46秒78)を出すも準決勝進出に届かなかった。見据えるのが「世界」だということを考えれば、当然の反応だった。
「まだまだ練習の段階ではありますし、世界の選手を見ると42秒台、1秒台というところがコンスタントに出ています。このタイムに満足することなく今シーズン、まだまだベストを更新できるようにもう一段、ギアを挙げられるようにしたいです。日本選手権(6月12-14日、愛知・パロマ瑞穂スタジアム)ではしっかり優勝して、アジア大会で優勝というところが今シーズンの一番の目標なので、そこへ向けてさらに磨きをかけていけたらと思います」
落合は「まだ出し切った感じはない」と付け加えつつ、こう語った。

日本新記録でフィニッシュした落合‐永塚和志撮影
黒川和樹が記録した復活の一戦
静岡国際陸上では、男子400mハードルでも好記録が出た。眼鏡が特徴の24歳、黒川和樹(住友電工)が48秒50の大会新記録で3組の出走者の中で最速のタイムを刻んだ。「前半の(ハードル間の)13歩が詰まるくらい」調子が良かったという黒川。トラックには雨がぽつりぽつりを落ちていたにも関わらず快走を見せ、パリオリンピック日本代表の豊田兼(トヨタ自動車)らを破って3年ぶりに自己記録を更新した。
黒川のタイムは日本歴代8位に相当するものだった(日本記録は為末大の47秒89)。
試練を乗り越えた復活ストーリー
2021年の東京オリンピック、2022年、2023年の世界陸上に出場している黒川だが、その後は故障に悩まされ2024年の日本選手権を欠場し、パリオリンピックへの出場を逃した。昨年の世界陸上への切符も手にできなかった。
黒川は、精神的な面でより競技を楽しもうという気持ちを強くしたこと。これが今回、静岡国際陸上での結果につながったと話した。
「去年、(調子が上がらず)日本選手権に出ることを諦めて、そこから結構、メンタル的にいっぱいいっぱいで陸上をしていてもつまらないから、どうせ試合に出るなら一つ、一つを楽しんで、自分が出せる力を出そうと思い始めてからは、気持ちの面で押しつぶされずに、練習や試合に臨めているのかなと思います」

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