
1点差に迫り意気上がる花園大ベンチ-Journal-ONE撮影
高山の気迫と北九州市立大の守り
一打逆転となる絶体絶命のこの場面。北九州市立大の山本監督は、ここで今大会注目選手のひとりである高山柊吾(3年・東福岡)をマウンドに送った。
厳しい展開でマウンドに上がった高山。しかし、前評判高い140km/h中盤の直球とスライダーを武器に躍動する。その結果、後続を三振に仕留めてピンチを凌ぐと、雄叫びをあげてマウンドを降りた。
3-2と北九州市立大が1点をリードして迎えた最終回。追いかける花園大も、1番からの好打順で反撃に挑んだ。しかし、高山はこの回も躍動する投球を見せて花園大の上位打線を寄せ付けず。最後の打者を三振に切って取ると、再びのガッツポーズで喜びを現した。

ピンチを凌いで雄叫びをあげる高山-Journal-ONE撮影
恩師・伊藤義弘氏への思いが生んだ力投
試合後、高山は「監督のことを思い浮かべながら投げました。」とピンチでの登板を振り返った。その“監督”とは、元・千葉ロッテマリーンズの伊藤義弘氏のこと。
社会人のJR東海から千葉ロッテに入団した伊藤氏。150km/hを超える直球と鋭いスライダーを武器に、強気なインコース攻めと不屈の闘志でリリーバーとして活躍した。2010年には日本シリーズでの胴上げ投手にもなった東福岡高が誇るOBのひとりだ。
高山は東福岡校時代、同校監督であるその伊藤氏に指導を受けた。そして、高山が卒業した2025年にバイク事故で逝去した恩師。その恩師がNPB時代に躍動した東京ドームのマウンドで、恩師の魂を宿した気迫あふれる投球でチームを勝利に導いた。
「次戦も思い切って投げるだけです。」と、笑顔を見せた高山。その投球スタイルとは全く異なる優しい笑顔を見せた3年生守護神は、次戦への健闘を誓ってスタジアムを後にした。

恩師・伊藤義弘氏顔負けの気迫を見せた高山-Journal-ONE撮影
北九州市立大がつかんだ歴史的勝利と地域への誇り
「何せ、全てが初めてのことでしたので。」と、大学としては21年ぶりの出場と初出場に近い道のりを振り返ったのは北九州市立大の山本監督。
「うちには彼しかいない。フォークで三振を取るスタイルなので、追い込むまでのプロセスが大事。内外角、高めと上手く使えていたのが良かった。」と、四者連続を含む11奪三振と好投を見せた先発・山下を労った。
満塁のチャンスで、これ以上無い3得点を挙げて逆転。しかし、「森田投手を相手にチャンスは少ないと思っていたが、想定以上に得点する機会があった。その結果、選手たちが驚いてしまった。」と、自らの采配を省みるシーンもあった。

北九州市立大の山本浩二監督-Journal-ONE撮影
工夫と情熱が生んだ選手権出場と勝利
国公立大学が勝利を挙げたのは、第73回大会の和歌山大学(近畿学生野球連盟)以来、3年ぶりとなる。
私立大学と違い、雨天練習場を持たない北九州市立大。「雨の日は練習にならない。そのため、どれだけ晴れの日に効率よく練習できるかを意識している。」と、山本監督は話す。
加えて、授業の関係で全体練習をする時間が取れない課題もある。しかし、「朝の7時から3時間を全体練習に充てている。」など、選手と指導者が情熱を傾け工夫を重ね続けた。その成果が、第53回大会(2004年)以来、22年ぶりの勝利に繋がったのだ。

”22年ぶり”の大学野球選手権勝利を挙げた-Journal-ONE撮影
地域社会を野球でマネジメント
公立大学として、地域の連携も重視する北九州市立大。授業のカリキュラムだけでなく、野球部も子どもたちに野球を教えるなどの交流活動も行っているという。地域社会をマネジメントする総合的な企画力・実践力を養う地域創生学群で教鞭を執る山本監督ならではの発想だ。
北九州市民の期待と希望を背にした21年ぶり出場での初戦突破。次戦では関西の雄・関西大学との対決で、チーム史上初の2勝目を目指す。













