光の詩、曲がりくねる路地
光の回廊
奥にある未知の体験へ向かって、光の回廊を歩いていく。
見上げれば、気が遠くなるほど無数の筒が天井から吊り下げられている。ぶつからないように、自然とゆっくりとした歩調になり、路地の向こう側へそっと進んでいくことになる。この少し慎重になる歩行のテンポが、日常の忙しない頭を静めるのにちょうどいい。

あちこちで瞬くピンクや緑の光は、時に激しい雨のように、時にそよ風のように線を伝って流れ落ちる。光の動きを追いかけながら通路の奥へ奥へと進むうち、自分が光を観ているのか、それとも光の側が自分を迎え入れているのか分からなくなってくる。
気がつけば、この圧倒的な小宇宙の一部として、自分自身が完全に溶け込んでしまっている。その一体感がたまらなく心地よく、私たちはただただ、この光の路地を歩き続けてしまうのだ。

幾何学的な光の渦

路地を抜けた先で私たちを待っていたのは、四方を光に囲まれた、大きな立方体の吹き溜まりだった。
一歩足を踏み入れた瞬間、あまりの光景に足が止まる。それは、刻々と姿を変える光の渦に、自ら進んで巻き込まれに行くような体験だ。赤から青へ、鮮やかな七色から透き通るような透明へ。速度とリズムを不規則に変えながらキラキラとまたたく光の粒子は、片時も同じ姿を留めてはくれない。そこは万華鏡的な光の渦だった。
これほど激しい変化のなかに置かれると、不思議と考えることをやめてしまう。日常生活で動かし続けていた論理のスイッチを、強制的にオフにされる快感。
なるほど、二人がここ《Infinite Crystal World》を「現実離れした美しさ」と語ったわけだ。その評価の真意が、押し寄せる光のきらめきによって、私たちの『身体』へとしなやかに染み込んでいく。
光の余韻をまとい、さらに奥へ

すぐ近くの部屋では、鮮やかな色の花々が咲き乱れる《花と人、コントロールできないけれども共に生きる》や、足元から光が流れていく作品《流れははるか遠くに》に迎えられる。

そしてその先では、空・土・海・木・水などを筆で書いたような文字が、水墨画調の景色の中を下から降りてくる《世界はこんなにもやさしくうつくしい》——モノトーンの世界が、いつしか水墨画の世界へと染まっていく。

酔うような没入
花びらの奔流

《痕跡》という一室では、入り口で「酔いやすい方もいる」と注意を受けた。少し大げさな、と思いながら足を踏み入れた途端、その理由を文字通り『身体』で理解することになる。
長い枝に追従するかのような花と、散り広がる花びらが、すさまじい速さで周囲を回転していく。平衡感覚が揺さぶられる様な感覚に、数分とその場に留まっていられない程だった。目の前に広がるのは、うねるように伸びる長い枝と、すさまじい速さで回転していく花びらの奔流だ。まるで、万華鏡の内側に放り込まれて、誰かに力いっぱい回されているかのような錯覚に陥る。 ただ静かに立っているだけなのに、自分の足元がどちらを向いているのか分からなくなる不思議な浮遊感。
あまりの没入感に、数分と留まっていられないほど五感が揺さぶられるのだが、その眩暈すらどこか愛おしく感じてしまうから不思議な体験だ。

液体の中を歩く

続く《生と回帰の無常の抽象 – 痕跡》では、透明な壁で区切られた空間の下で、絵の具に混ぜるメディウムを思わせる、とろりとした液体が渦を巻いていた。ここでは長靴に履き替え、渦巻く液体の中を実際に歩いて渡る。一歩ごとに足元が沈み込むような感触があり、絵の具の中を歩いているのか、それとも生命の始原そのものを踏みしめているのか、不思議な混乱を覚えた。

一筆書きの光
色を変える光

ランプがいくつも吊り下げられた部屋に入る。床も壁も鏡面に覆われ、無数の光が四方八方に反射する。ランプは黒いソケットに透明なガラス、下方だけにうっすらとスモークがかかっている。人が近づくと点灯し、人が増えるとブルーからピンクへと色を変えていく。
《呼応するランプの森:One Stroke – a Year in the Mountains》——見つめているうちに、光の色は青からだんだん赤へと移ろう。そうしているうちに、ランプはもうランプではなく、宙に浮かぶ無数のメタリックな玉になっていくように感じられた。

もうひとつの宇宙、もうひとつの太陽
雨が降る小宇宙

暗闇の3階へ上がると、足元には生き生きとした苔のなだらかな丘陵が広がっている。まるで、知る人ぞ知る美しい日本庭園を、夜にひとり占めしているかのような静けさだ。その波打つ緑のただなかに、まがりくねった小道がのびている。 一歩進むごとに、苔の丘から力強く突き出る角柱が、描かれる赤い花々をまとって姿を現す。

ただ歩いているだけなのに、まるで自分がこの不思議な世界のバランスを少しずつ紐解いていくような、心地よい冒険心が湧いてくるのだ。













