
梅雨明け直後の京都は、抜けるような青空と、肌に刺すような日差しに満ちていた。チームラボ バイオヴォルテックス 京都で過ごした光と認識の宇宙——その興奮が冷めやらぬまま外へ踏み出すと、待っていたのは至って普通の、けれど確かな手触りのある京都の日常だった。デジタルの宇宙から、人の温もりある場所へ。ここからは、その余韻を五感で持ち帰るための番外編をお届けしたい。

自分の絵が、壁の中で命を得る
スケッチファクトリー|チームラボ バイオヴォルテックス 京都
クレヨンが、命を宿すとき
「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」のスケッチファクトリーでは、用意された用紙に、来場者がクレヨンで思い思いの生き物を描く。魚でも、恐竜でも構わない。描き終えた絵を専用のスキャナーに読み込ませると、それは「グラフィティネイチャー」や「スケッチオーシャン」といった作品の中で、まるで命を吹き込まれたかのように動き始める。

壁の中の小さな生態系
魚を描けば尾ひれを揺らしながら壁一面を自由に泳ぎ回る。壁に手を伸ばして自分の描いた生き物に触れると、びっくりしたように向きを変えたり、逃げていったりする。自分の描いた一枚の絵が、壁の中の小さな生態系の一員になる——その様子を眺めているだけで、時間を忘れてしまう。

絵を、形にして持ち帰る

ひとしきり壁の生き物たちと戯れたあとは、出口エリアの「スケッチファクトリー」のオリジナルグッズ工房へ。タブレットで自分の描いた絵を呼び出し、グッズの種類とレイアウトを選べば、数分で加工が完了する。

缶バッジやマグネット、パズル、ペーパークラフト、Tシャツやハンドタオルまで、京都のミュージアムはラインナップの豊富さが際立つという。中でも目を引くのが、「スケッチオーシャン」で泳がせた絵を使った、京都ミュージアム限定ロゴ入りのオリジナルシール。2026年7月からの新展開で、絵の形そのままにカットされる仕様も凝っている。

価格帯は缶バッジで600円から、トートバッグで3,000円、Tシャツで3,000-4,000円ほどまで。スマホで注文すれば、館内を巡っている間に製造が進み、受け取りには待ち時間がほとんどない。絵を描くという体験が、そのまま形になって手元に残る——未来的でありながら、どこか工作の時間のような懐かしさもある仕組みだった。

すぐ隣には、自分の絵とは別に「公式ギフトショップ」もある。米袋を再利用したノートPCスリーブやオリジナルのティーバッグなど、チームラボらしい視点のお土産が並ぶ。
なお館内での飲食は禁止されており、イートインスペースはない。持ち帰りを前提とした物販とスケッチファクトリーのみ、という点は覚えておきたい。
芝生の向こうに、馬と人の物語があった
The Paddock Cafe
芝生と、一頭の馬の記憶

チームラボ京都から歩いてすぐ、南岩本公園に寄り添うように、平屋の一軒がある。The Paddock Cafeだ。目の前に広がる芝生と、一本の大きな木。京都の山並みを背景に、ゆったりとした時間が流れている。
入口には蹄鉄でできた文鎮、レジには黒い馬のフィギュアが置かれ、物販コーナーには馬にまつわるグッズが並ぶ。強い日差しの中、緑の陰に守られながらパンケーキをいただいた。「パドック」とは、競走馬がレース前に体をならす広場のこと——その店名の由来を聞きながら、ふと店の奥へ目をやると、そこにはもっと大きな物語があるように感じられた。

別稿にて
この日は幸運にも、オーナー・林右典さんご本人からお話を伺う機会に恵まれた。引退した競走馬たちの余生を支える活動、馬に触れる機会のない人々への思い——その全容は、別稿にて改めてお届けしたい。
創業140年を迎えた老舗が守る、京都の一品
京 駿河屋 京都駅前店

創業以来、この地で親しまれてきた
取材を終えて京都駅へ向かう道すがら、ふと立ち寄ったのが「京 駿河屋 京都駅前店」だった。明治19年(1886年)創業。京都駅がまだ「七条停車場」と呼ばれていた時代から、この地で親しまれてきた老舗和菓子店だ。京都駅前で140年にわたり暖簾を守り続け、伝統の羊羹や京菓子は観光客の土産としても人気を集めている。
持ち帰った、ひとひらの甘さ
購入したのは、季節限定の水羊羹。持ち帰り、家の冷蔵庫でしっかり冷やしてから、あらためて味わうことにした。表面はつるりと滑らかな舌触りで、歯で食べるというよりも、舌でゆっくり押しつぶすようにして口に運ぶ。きめ細やかなこしあんからは、なめらかな喉ごしとは裏腹に、小豆の風味がじわりと立ちのぼる。上品な砂糖の甘さ。同じ大きさのチョコレートなら胃にもたれそうなところを、これは一つ、するりといけてしまう軽さだった。
旅先で出会った甘さを、日常に持ち帰る——そんな余韻の味わい方も、悪くない。













