「とにかく野球をやってほしいです」。
硬球は当たれば痛い。夏は暑いし、土まみれになる。決して楽な競技ではない。それでも、野球にはそれ以上の価値があるという。
「誰にでも挨拶ができるようになる。コミュニケーションが取れるようになる。野球以外にも一生の財産になるものをたくさん得られるんです」。
それは石原監督自身が高校野球を通じて得たものでもある。そして、これまで送り出してきた教え子たちが社会で活躍する姿を見続けてきたからこそ語れる言葉でもあった。
勝つことは大切だ。日本一になることも大切だ。しかし、その先にはもっと大きな価値がある。野球を通じて人として成長すること。仲間を思いやること。社会に出ても活躍できる人間になること。
石原康司監督が築き上げた神戸弘陵学園という名門の本当の強さは、そこにあるのかもしれない。

「とにかく野球をやってみて欲しい」と石原監督-Journal-ONE撮影
石原康司監督と93人が挑む大会の行方
記念大会に挑む神戸弘陵学園“無冠世代”の覚悟
石原康司監督が率いる神戸弘陵学園が挑む最後の舞台。それは、7月18日に開幕する第30回記念全国高等学校女子硬式野球選手権大会だ。
記念すべき30回大会となる今大会。そこには、過去最多となる70校が出場する。兵庫県の丹波市と淡路市を中心に熱戦が繰り広げられ、それぞれの会場で日本一を目指す戦いが始まる。
神戸弘陵学園は7月20日、丹波市春日スタジアムに登場する。
創部以来、ユース大会5回、選抜大会5回、選手権大会4回の優勝を誇る神戸弘陵学園。しかし、今夏の3年生たちはまだ全国タイトルを手にしていない“無冠世代”。ユース大会での初戦敗退。センバツ大会準決勝での逆転負け。その二つの悔しさを糧に、選手たちは「全てに日本一基準」を見つめ直し、夏へ向けて成長を続けてきた。
石原監督が語った「3年生の底力」。故障から復活を目指すエース・山戸優菜。4番として責任感を増した島本そあ。加えて、春に躍動した濱島葵をはじめとする下級生たち。そして、ベンチ入りを懸けてしのぎを削る93人の部員たち。
神戸弘陵学園の夏は、まだ完成していない。だからこそ強い。だからこそ可能性に満ちている。

93人で夏に挑む神戸弘陵学園の選手たち‐Journal-ONE撮影
佐久長聖との三度目の対決、そして甲子園へ
順調に勝ち進めば、丹波市で行われる最終決戦で待ち受けるのは、今春の全国高等学校女子硬式野球選抜大会を制した佐久長聖高校だ。
ユース大会。センバツ大会。今の3年生たちが二度苦杯をなめさせられた相手との三度目の対決。その時、これまで積み重ねてきた努力と成長は、どのような答えを導き出すのだろうか。
そして8月1日。高校野球の聖地・阪神甲子園球場で行われる決勝戦。
甲子園のグラウンドに立つことは叶うのか。神戸弘陵学園は悲願の全国制覇を成し遂げることができるのか。
ベンチ入りする25人だけではない。最後の夏を支える68人の仲間たちが付いている。引退試合を終えながらも、「日本一」という夢を託した3年生たち。そして、彼女たちを支えてきた家族や卒業生たち。すべての想いを乗せた神戸弘陵学園の挑戦が、いよいよ始まる。
無冠世代と呼ばれた彼女たちは、最後の夏にどのような景色を見るのだろうか。その結末を、ぜひ球場で見届けてほしい。















