
ベンチには”再び頂点へ”の文字が掲げられている‐Journal-ONE撮影
全員が考える「夏の登録メンバー25人」アンケート
その伝統は現在、さらに新たな段階に入った。驚いたのは、この夏の選手権大会を前に行ったという取り組みだった。
「全部員に、夏の登録メンバー25人を選ぶアンケートを書いてもらいました。」と、石原監督が明かす。
もちろん、その結果がそのまま登録メンバーになるわけではない。しかし、誰が仲間から信頼されているのか。誰が日本一になるために必要な選手なのか。チームをどう見ているのか。それを全ての部員が考える機会になる。
自分のことだけではなく、チーム全体を見渡す視点を持つことができる。勝つためだけではない。人として成長するための取り組みでもある。
人間形成を重視し、選手の主体性を育てるためなら変化を恐れない。それが石原監督の考えるチームづくりだ。そして、その文化こそが神戸弘陵学園を女子高校野球界屈指の名門へと押し上げた大きな要因なのかもしれない。

技術向上だけでなく選手たちは練習に取り組む‐Journal-ONE撮影
強いチームをつくり続ける哲学
石原康司監督が語る「強い組織」の本質
「強いチームをつくり続ける哲学には共通点があります」。
女子高校野球界を代表する存在となった今も、その歩みを止めるつもりはない。全国で勝ち続けるだけではなく、人を育て続ける組織になること。真の意味で“女子野球の大阪桐蔭”と呼ばれる存在になるため、石原監督は今なお様々な挑戦を続けている。
その象徴とも言えるのが、選手権大会前に毎年行われる3年生の引退試合だ。
今年は、大会直前の強化合宿を淡路島で実施する。その期間中に行われるのが、選手権大会の登録メンバーから漏れた3年生たちを主役にした紅白戦である。2年前、全国から高い志を持って神戸弘陵学園の門を叩いた11期生38人。甲子園を目指し、日本一を目指し、この場所に集まってきた選手たちだ。
しかし現実は甘くない。選手権大会のベンチ入りは25人。そこには、選抜大会で結果を残した2年生たちもいる。さらには才能豊かな1年生たちも加わる。どれだけ努力しても、全員が最後の夏にベンチ入りできるわけではない。レギュラーを目指し、ベンチ入りを目指し、何度も壁に跳ね返されながらも戦い続けてきた選手たちに、高校野球人生の終わりが近づいてくる。

選手たちの成長に目を細める石原監督-Journal-ONE撮影
93人全員で戦う神戸弘陵学園の強さ
石原康司監督はその現実から目を背けようとはしない。
「メンバー外になった選手の親御さんたちも多く来られます。毎年、本当に多くの涙がグラウンドに落ちる試合になります」。
そう語る石原監督の視線は、遠くを見つめていた。しかし、その涙は終わりを意味するものではない。むしろ、新たな役割への始まりだという。
「この試合があるからこそ、チームが一体になるんです」。
引退試合を通じて、メンバー外となった選手たちは自らの区切りをつける。そして今度は選手権大会で優勝するため、仲間を支える側へと回る。スコアラー、サポートメンバー、スタンドから声を枯らす応援団。役割は変わっても、目指す場所は同じだ。日本一、その目標に向かって、93人全員が一つになる。
スポーツに限らず競争には勝者がいれば敗者もいる。最後の大会にベンチ入りできなかったという事実は、生涯消えることのない記憶として残るだろう。それでも、その記憶が負のものではなく、仲間を支える力へと変わるのであれば。チームのために全力を尽くしたという誇りになるのであれば。
神戸弘陵学園で過ごした3年間は決して苦い思い出だけでは終わらない。
そして、その想いを背負うレギュラーたちもまた変わる。ベンチ入りできなかった仲間の分まで。スタンドから声を枯らす仲間の分まで。グラウンドに立つ選手たちは、その身を粉にして勝利へ向かう。
だからこそ神戸弘陵学園は強い。25人のチームではなく、93人全員のチームだから強いのである。

93人の部員と石原監督-Journal-ONE撮影
石原康司監督が未来の女子野球選手へ送るメッセージ
そして最後に、石原監督は女子野球に青春を懸ける小学生、中学生たちへこんな言葉を送った。















