旭川は、ジンギスカンの名店が駅の徒歩圏にまとまっている街です。ところが、長く親しまれてきたお店が2025年の秋に営業時間を大きく変えていたり、予約の受け付け方に独特のルールがあったりと、事前に知らないまま向かうと入れずに終わってしまうことも珍しくありません。
この記事では、旭川のジンギスカンの成り立ちから、代表的な専門店、予約と行列の攻略、料金の目安、持ち帰りまでを一通りまとめました。初めて訪れる方にも、久しぶりに足を運ぶ方にも役立つ内容です。
旭川のジンギスカンの特徴

北海道の郷土料理として知られるジンギスカンですが、そのはじまりは食文化ではなく国の政策にありました。焼き方や味つけにも地域ごとの違いがあり、旭川はその違いが一つの街の中で楽しめる場所です。まずは背景から整理します。
羊毛の国策として始まった綿羊飼育から生まれた
羊肉が北海道で食べられるようになったのは大正時代のことです。軍服に欠かせない羊毛の輸入が第一次世界大戦で途絶えたことを受け、大正7年に政府は羊毛の国内自給をめざす「綿羊百万頭計画」を打ち出し、滝川や札幌の月寒など全国5カ所に種羊場を開設しました。
羊肉料理としてのレシピは、滝川種羊場長を務めた山田喜平が昭和6年に発行した書物に記されたものが最初とされています。ただし、庶民の食卓に広まったのは戦後になってからで、値段の割においしかったことが理由に挙げられています。
現在では平成19年に農山漁村の郷土料理百選にも選ばれ、北海道を代表する一皿として全国に知られるようになりました。
タレに漬ける滝川式と後づけの札幌式に分かれている
ジンギスカンには大きく分けて2つの食べ方があります。焼いた肉にタレを付けて食べるものが札幌式、あらかじめタレに漬け込んだ肉を焼くものが滝川式と呼ばれ、道内でも地域によって主流が異なります。
タレ漬けについては、ルーツが滝川種羊場にあり、普及を担ったのが松尾ジンギスカンだったという流れがよく知られています。肉の種類にも違いがあり、生後1年未満の子羊がラム、生後2年以上がマトンで、どちらも食べられてきました。
ラムはくせが少なく柔らかいため、羊肉に慣れていない方でも食べやすい一方、マトンは香りが強く、その風味こそが好きだという方も多くいます。どちらが正解ということはなく、好みで選べるのがジンギスカンの面白いところです。
旭川は2つの流儀が同じ街に同居している
旭川は味付けジンギスカン発祥の地とされる滝川に近く、タレ漬けの文化圏に含まれる街です。実際、旭川の中心部には滝川生まれの味付けジンギスカンを受け継ぐ老舗が今も店を構えています。
その一方で、冷凍せずに仕入れた生ラムを焼き、自家製のタレやスパイスを後から付けて味わうスタイルの人気店も市内にあり、こちらは札幌式に近い食べ方です。つまり旭川では、どちらの流儀も歩いて回れる範囲で味わえます。
1泊できるなら、味付けと生ラムを1軒ずつはしごして食べ比べるという贅沢な楽しみ方も可能です。旅程を組む前に、自分がどちらを目当てにしているのかを決めておくと、店選びがぐっと楽になります。
旭川で出会える羊肉は部位と熟成で味が変わる

同じジンギスカンでも、使われる肉の状態や部位によって味わいはかなり変わります。
メニューに並ぶ言葉の意味がわかっていると、注文の段階から楽しみが増えるはずです。旭川の店でよく見かける肉の呼び名を整理しました。
生ラムは冷凍せず仕入れた肉を指している
メニューでよく目にする「生ラム」は、冷凍していない状態で仕入れた子羊の肉のことです。旭川を代表する専門店では、その日に仕入れたラム肉を冷凍せずチルドのまま扱い、鮮度と柔らかさを保った状態で提供しています。
厚みのある切り身であっても柔らかく、肉汁をしっかり含んだ味わいになるのは、この扱い方によるところが大きいといえます。羊肉が苦手だと感じていた方が、旭川で生ラムを口にして印象が変わったという話はよく聞かれます。
においの強さは肉の質や鮮度と結びついているため、まずは生ラムから試してみると、羊肉の見方が変わるかもしれません。
マトンは香りが強く食べ慣れた人に好まれている
マトンは生後2年以上の羊の肉で、ラムに比べると肉質がしっかりしています。旭川の老舗では羊肉を部位に合わせて数種類そろえており、さっぱりとしたラムと、香ばしく肉本来の味が立つマトンを飲み比べるように楽しめます。
独特の香りは敬遠されることもありますが、良質なマトンは臭みではなく爽やかな草の香りにたとえられます。
北海道でジンギスカンに親しんできた方ほどマトンを選ぶ傾向があり、この香りこそがジンギスカンだと語る人も少なくありません。初めての方はラムから入り、気に入ったら次にマトンへ進むという順番が無難でしょう。
肩ロースから焼くと肉の違いがわかりやすくなる
複数の部位を頼んだときは、焼く順番にも工夫の余地があります。旭川の人気店では、最初に肩ロースから焼くのが店のスタイルとして案内されています。脂と赤身のバランスが取れた部位から始めると、そのあとに焼く赤身寄りの肉との差が舌でわかりやすくなるためです。












