宇都宮ブレックス。彼らは、なぜこれほどまでに試合の流れに動じず、勝利を積み重ねることができるのか。
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宇都宮ブレックスが体現する「習慣」という強さ
圧倒的な個の能力を持ち、オフェンスの起点にもなるDJ・ニュービル。そこに2人がかりで守りに行くと、グラント・ジェレットをマークする者がいなくなった。
ニュービルもジェレットも、その刹那を見逃さなかった。ジェレットはニュービルからのパスを受け取ると、易々とシュートを決めた。
2人の顔はまるで涼やかに見えた。「相手がこう来たらこう動けばいい。」というのがいかにも刷り込まれているからこその表情だったとしてもいい。
シーズン終盤の4月26日。IGアリーナでホームの名古屋ダイヤモンドドルフィンズを相手に、宇都宮ブレックスが見せた場面だった。
ポストシーズン出場権を獲得済みながら、外国籍選手を2人を故障で欠き危機感迫ったプレーぶりをする相手。それでも、宇都宮はやるべき仕事を淡々とこなし、90-74と快勝を収めた。
宇都宮のジーコ・コロネルヘッドコーチが度々、用いる単語が「ハビット」だ。「習慣」を意味する単語だ。
「私たちにはチームの基礎を築くための習慣があります。ただ、試合の序盤ではもっとそうした習慣通りのプレーができるようにしなければなりません」。

素早くパスを出すニュービル‐永塚和志撮影
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦に凝縮された完成度
宇都宮ブレックスは、は3月にマカオで行われたEASL(東アジアスーパーリーグ)に出場。その決勝ラウンド「ファイナルズ」で優勝を果たした。
しかし、準々決勝では台湾のニュータイペイ・キングスを相手に出だしで苦戦を強いられた。この言葉は試合後の、コロネル氏によるものだ。
そこからの宇都宮は、見違えるようなプレーをした。本来の彼らに戻ったといってもいい。最終的には相手に20点以上の差をつけたの快勝となった。彼らにとって立ち返るべき習慣という場所に戻った結果だった。
バスケットボールを含めたスポーツにおける常套句に、試合では練習でしたことしか発揮できないといったものがある。しかし、Bリーグにおいて宇都宮ほどこの使い古されたフレーズがなじむチームもない。
今シーズンに入るにあたって、前年に所属した選手は誰1人として抜けることがなかった。移籍が活発化した今のBリーグにおいては、稀有なことだ。それどころか、大半の選手たちが何年にもわたって宇都宮にとどまり続けてきた。それゆえ、それぞれに自身の役割を認識するだけでなく、チームメートがどう動くかも頭に入っている。だからこそ、例えば相手が虚を突くような守り方をしてきても、面食らうことなく対処ができる。

エース・比江島慎も終始落ち着いたプレーを見せる‐永塚和志撮影
宇都宮ブレックスの文化とケミストリー
宇都宮ブレックスに根づく「一喜一憂しない」精神性
「僕たちは一緒にプレーをしてしばらく経つから、ケミストリーがある。今日だって、18もターンオーバーをしてしまった(実際は19)。しかし、慌てふためくようなことはなかった」。
冒頭の名古屋Dに対しての勝利後、相手が差を詰める展開においてもチーム全体がまったく動じる様子がなかったことについて聞かれたジェレットは、このように答えた。回答は、そう長いものではなかった。おそらくは、何度も聞かれたことのある質問だったからだろう。
余談ながら、ジェレットやニュービルなど宇都宮の外国籍選手は勝敗に関わらず、発言が淡々としている。勝ってもはしゃぐことはなく、負けても失意に打ちひしがれたりはしない。あるいは、契約に際して球団はそうした人物であれば宇都宮の一員となれるというところも判断してのことだろうか。
一喜一憂をしないということについては無論、チーム全体に言えることだ。だから試合中においても我を見失うということがない。劣勢でも調子が悪くても、あくまで自分たちがやるべきことに立ち返るのみだ。

常に淡々と言葉を発するジェレット‐永塚和志撮影
長い時間が築いた経験値とチーム内の共通理解
そのことを、宇都宮ブレックスは「文化」という言葉で凝縮して表現する。これは、彼らを倒そうとするライバルチームの多くもだ。不可視なものなのに、宇都宮の「文化」はどこかその輪郭のようなものが見える気になる。それほど、確固たるものなのだ。

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