色とりどりの傘が輝く、アンブレラスカイ 2026。Journal-ONE取材版がお届けする、ムーミンバレー完全攻略レポート【第一弾、第二弾、先行公開中!】

色とりどりの傘が輝く、アンブレラスカイ 2026。Journal-ONE取材版がお届けする、ムーミンバレー完全攻略レポート【第一弾、第二弾、先行公開中!】

世界最大級の水族館・海遊館。ジンベエザメが描かれた象徴的な建物の先には、5400トンの海が待っている。
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn

海へ——螺旋の回廊を下りながら

水族館の3じ——掃除、調餌、給餌


「ようこそいらっしゃいました。では、参りましょか」

田井さんの後について、エントランスのスロープを上がりはじめた瞬間、空気が変わった。外の湿った梅雨の気配が遠のき、ひんやりとした青みを帯びた光が体を包む。海遊館は入口から出口まで、螺旋状のスロープを歩きながら各エリアを巡る構造になっている。上がって、下りて——気づけば、深海へと誘われるように、展示の世界へと引き込まれていく。

エントランスを抜けた先にある海遊館のトンネル。ひんやりとした青みを帯びた光が、深海の世界へと誘う。

エントランスを抜けた先にあるトンネル型水槽「アクアゲート」。 ひんやりとした青みを帯びた光が、深海の世界へと誘う。—Journal-ONE撮影


まだ開館前の館内では、あちこちで窓拭きや掃除をするスタッフの姿があった。

「ひたすら掃除です。掃除、調餌、給餌——水族館の3じと言うんですけど。まずお掃除、次に餌を作ること、そして餌をあげること。この繰り返しが基本になっています」

田井さんがさらりと言った。掃除して、餌を作り、餌をあげる。その言葉の飾り気のなさが、この場所の誠実さをそのまま表しているようだった。

「ここからもう、海の中なんです」

田井さんが静かに言った。確かに、一歩踏み込んだだけで、地上の時間が止まったような感覚がある。

太平洋、5400トンの宇宙

世界最大級の水槽——約40年現役のアクリルパネル

スロープを進むと、突然、視界が割れた。

壁ではない。窓でもない。ただそこに、海があった。

「太平洋」水槽——海遊館の心臓部とも言うべき、世界最大級の大水槽だ。縦横に広がるアクリルパネルの向こうに、5400トンの海水が満ちている。厚さ30センチ、1990年の開館当時は最先端の技術だったというそのアクリルは、いまも圧倒的な存在感で来館者の前に立ちはだかる。

海遊館の巨大な「太平洋」水槽。厚いアクリルパネルの向こうを泳ぐジンベエザメや魚群と、立ち上る気泡。

5400トンの海水で満たされた、 魚類を展示する水槽としては世界最大級の「太平洋」水槽©海遊館


「アクリルの技術は、その後どんどん進みまして、今は75センチ程度まで作れるようになっているそうです。でも、ここのはもう40年近く現役ですよ」

田井さんが誇らしげに言う。開業以来36年。その歳月の重みを、アクリルの向こうで悠然と泳ぐ巨大な影が証明していた。

ナンヨウマンタが翼のようなヒレを広げて滑空する。メジロザメの仲間が静かに旋回する。ギンガメアジの群れが、光を受けて銀色に煌めきながら渦を巻く。そして——。

「海」くんと「遊」ちゃん

海遊館のシンボル——2頭のジンベエザメ

水槽の中ほどに、その影が現れた。

全長5メートル以上。悠然と、しかし確実に、水を割って進んでくる。ジンベエザメだ。

「オスの『海』くんと、メスの『遊』ちゃん、2頭おるんですよ」

大阪港の海遊館の巨大水槽「太平洋」を悠然と泳ぐジンベエザメ。青く澄んだ水中を、特徴的な斑点模様を持つ大きな魚体が、ほとんど力を抜いたようにゆっくりと進んでいる状態。

巨大水槽で青く澄んだ水中を悠然と泳ぐ 巨大なジンベエザメ。—Journal-ONE撮影


田井さんが、まるで身内を紹介するように言った。「海」くんが5.3メートル、「遊」ちゃんが6.2メートル。野生では10メートルを超えることもあるというから、2頭ともまだ若い。「海」くんと「遊」ちゃん——その呼び名の親しさが、ここで長年にわたって積み重ねられてきた、人と生きものの関係をそのまま映しているようだった。

ゆっくりと、ほとんど力を抜いたように、いい感じで泳いでいる。

「そのゆったり加減、私も見習わんと…」

私は思わずつぶやいていた。

おにぎり1〜2個分——1トンの巨体の食事量

体重、およそ1トン。それだけの巨体が1日に食べる量は、わずか7キロだという。

「人間に換算したら、1日おにぎり1〜2個分くらいですわ。食べすぎると消化不良になりますから、少量に抑えてるんです」

おにぎり1〜2個。思わず笑ってしまいそうになったが、水槽の向こうの2頭は意に介さず、ゆったりと泳ぎ続けている。

海遊館の巨大水槽を悠然と泳ぐジンベエザメ。アクリルガラス越しに見上げる雄大な水中世界。

海遊館の巨大水槽を悠然と泳ぐジンベエザメ。 アクリル越しに見上げる雄大な水中世界。—Journal-ONE撮影

ふと、田井さんがアクリルの前に歩み寄り、何かを語りかけるように水槽を見つめた。言葉は聞こえなかったが、その直後、「海」くんがゆっくりとこちらへ向きを変えてきたように見えた。偶然かもしれない。でも、そうではないかもしれない。

深海1000メートルの謎

データロガーが明かした、想定外の行動

「実は、ジンベエザメが深海に潜ることがわかってきてるんです」

田井さんが少し声のトーンを落とした。

「海遊館では、野生のジンベエザメの調査も行っており、背ビレにデータロガーという記録装置を装着して放流し、1ヶ月後に自動的に外れてそれまでのデータを人工衛星に送信するんですが——1000メートル以上の深さまで潜ってることが判明しました。水温が一桁台になるような場所まで」

なぜ潜るのか。それはまだ、誰にもわからない。

海遊館の太平洋水槽を泳ぐジンベエザメ。白い水玉模様が青い水中に浮かび上がっている。

その巨体は、ときに深海1000メートルの闇へ向かう。

何を求めて潜るのか。—Journal-ONE撮影

300匹の赤ちゃん——繁殖の謎

「繁殖のこともほとんどわかってないんです。野生の赤ちゃんはほとんど発見されてなくて。過去に台湾で捕獲されたメスのお腹から、30センチほどの赤ちゃんが300匹出てきたことがあって——それが貴重な記録として残ってます」

■記者プロフィール
編集部-小谷
ナイトランが好きなインドア派。旅と朝カフェ、鮮魚コーナーを愛するJournal-ONE編集部員。メーカーでのアートディレクター・商品企画を経て、気づけばメディア運用側へ。
取材・文:
編集部- 小谷( 日本 )
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn