心ほどける四国の旅。もっと四国を楽しむ!四国を元気に!サポーターズサイトを見る

心ほどける四国の旅。もっと四国を楽しむ!四国を元気に!サポーターズサイトを見る

ニフレルWONDER MOMENTS。巨大な球体と光の円環の中で来館者が体験を楽しんでいる。
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn

毒を無効化し、平和に寄り添って暮らす美しい共生関係。そんな図鑑的な理解の一歩先で、意外にも彼らは、ただの同居人同士の小競り合いを繰り広げていた。命は、教科書の枠には収まりきらないらしい。

攻撃、防御、もほう、無効化。まるでロールプレイングゲームのステータス画面のような分類で、猛毒を持つ生きものたちの生存戦略が語られていく。そのアナログで可憐な仕掛けを目にした瞬間、大人の理屈はふっと剥がれ落ち、童心のような素直な驚きが胸を満たしていった。

【およぎにふれる】──水面の向こうにある、もうひとつの世界

生きものそのものを展示するのではなく、その「泳ぎ」そのものを見つめる空間があった。水面のゆらぎ、床へ落ちる影、そして光の軌跡。ここでは魚たちの姿以上に、水の中を移ろう動きそのものが主役となる。生きものたちが描く軌跡は、いつしか光と影のアートへと変わっていた。

ニフレル「およぎにふれる」ゾーン。水面のゆらぎを天井へ投影した幻想的な展示空間。

水面から差し込む光を見上げる。生きものの泳ぎと光のゆらぎがひとつの風景として重なっていた。@ニフレル


光の演出——現れては消える、儚い影

続く「すがたにふれる」では、再び深い闇の底へと引き込まれる。

空間の中心で強い視線を集めていたのは、一筋の光が白い天井に向かって真っ直ぐに立ち上っていく、幻想的な一角であった。見上げれば、天井いっぱいに柔らかな光の揺らぎが絶えずかたちを変えながら滲んでいる。

「あ、出ました!出ました!出ました!」

西前さんが不意に声を弾ませた。天井の光の中に、すっと魚の影がよぎったのだ。だが声を上げた次の瞬間には、その影はもう溶けるように消えている。

「あ、なくなっちゃった」

現れては消える、その一瞬を捉えられるかどうかは、完全に運まかせらしい。

「魚の泳ぎを、水槽で実際に魚自体を見るのではなく、フォルムと言いますか、影で紹介しようという試みです」

村上館長がそう解説してくれる。

「この展示も、実際に田んぼで感じた情景をどうやったら伝えられるだろうか?というのがスタート。まさに試行錯誤の賜物です」

少年時代、田んぼに水が入ると、メダカやドジョウのような小さな魚が泳ぎはじめ、その影が底に映る。水面がゆらぐと、波紋の影ができる。あの原体験が、この展示のモチーフになったのだという。

「光の当て方やスクリーンの形状に相当工夫して、ようやくこの展示にでたどり着いたと聞いています」

個人的な記憶の中の光景が、試行錯誤の末にこの洗練された演出へと昇華されたのだと知ると、天井を這う光の一瞬一瞬が、急に愛おしいものに見えてくる。

視線を下ろすと、緩やかに弧を描きながら伸びる白い台の上に、いくつもの透明な水槽が連なっていた。台の上に据えられた水槽から零れる光が、今度ははっきりと台座の表面に魚たちの影を落としていた。天井では現れては消えていく儚い影が、手元の台座では輪郭を持った影となって留まっている。ふたつの間を目で往復しながら、私はしばらくその場を動けずにいた。

ニフレル「およぎにふれる」ゾーン。魚の姿と影を使って泳ぎの美しさを表現する展示。

生きものそのものではなく、その影に目を向ける。泳ぎの軌跡が光と影のアートへと変わっていた。©ニフレル

そうして台の上の影を追ううちに、最後に辿り着いた水槽で足が止まった。水中で直立し、ゆらゆらと揺れるヘコアユたちだ。縫い針のように繊細で鋭いシルエットが台座の上に揺らめく様は、まさに研ぎ澄まされた「影の美学」の極致であった。

「ここでも先ほどの『いきもの五七五』を、影で生き物の名前と合わせて紹介しています。タイミングが良い時は、魚の影がここに映り込んで、とても印象的な展示になります」

村上館長の言葉に、西前さんも「あ、影。そうですね」と頷く。

「ここ分かりやすいかもしれないですね。魚の影がこう、水槽の外に出て」

見れば、水槽の縁を越えて、白い壁際にまでヘコアユの影が伸びている。展示と、それを見る人間が立つ場所との境界が、光の加減ひとつで曖昧になる瞬間だった。

「夏休みなので、小学生の来場も多く、あの白い壁際に立ってピースしたら自分の影が映るので、みんなでピースして遊んでいたりするんですけど、そんな楽しみ方を見つける子どもの感性はやっぱりすごいなとと感心しています」

館長がそう笑う。生きものの影を見つめるための壁が、いつの間にか自分自身の影と戯れる場所にもなっている。観察する側とされる側の境界線が、この場所では驚くほど軽やかに溶けていた。

ニフレル「およぎにふれる」ゾーンで展示されるチョウチョウコショウダイの幼魚。ヒラムシに擬態する特徴的な姿が見られる

毒を持つヒラムシに姿を似せて身を守るチョウチョウコショウダイの幼魚。小さな命の生存戦略が、この一匹に凝縮されている。@ニフレル

■記者プロフィール
編集部-小谷
ナイトランが好きなインドア派。旅と朝カフェ、鮮魚コーナーを愛するJournal-ONE編集部員。メーカーでのアートディレクター・商品企画を経て、気づけばメディア運用側へ。
取材・文:
編集部- 小谷( 日本 )
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn