明治時代に創業された「桂花園」。掛川で長く親しまれてきた葛の文化を受け継ぎながら、今も懐かしさと新しさを感じるお菓子をつくり続けています。
趣ある瓦屋根の店構え。その店内には、葛を使った名物の「丁葛」はもちろん、伝統の製法を守り続けるお菓子が並んでいました。
今回は掛川に行ったからこそ味わってほしい。職人技のつまったお菓子をご紹介します。

立派な松が出迎える-水木彩也子撮影
掛川に根付く葛の文化を今に
掛川では、葛の繊維から「葛布」と呼ばれる織物がつくられてきました。葛は繊維だけでなく、根からは葛粉がつくられ、葛湯もこの土地で親しまれてきたもののひとつです。
そんな桂花園を代表する「丁葛」も、掛川に根付く葛文化から生まれたお菓子。
昔は葛の根を葛粉にし、四角く固めて軒先に吊るしていたそうです。その姿が豆腐のように見えたことから、一丁、二丁と数えられるようになり、「丁葛」と呼ばれるようになったといいます。
そんな本葛を使った丁葛は、ひとつずつ手作業で柔らかな紙に包まれ、紐で結ばれています。その紐をほどいてカップに入れ、熱湯を注いでくるくるとかき混ぜれば、艶やかな葛湯のできあがり。
現在は昔ながらの「くずゆ」をはじめ「すっぽん葛湯」や「コラーゲン葛湯」など13種類の豊富な味のバリエーションが楽しめます。好きなものを選べるばら売りから、贈答用の箱入りのものまでシーンに合わせて選ぶことができます。

ぎっしりと並んだ丁葛たち。どれも美味しそうで悩みます-水木彩也子撮影
心を込めて葛湯でおもてなし
寒い時期には温かい葛湯を、暑い時期には冷たい葛湯を。お店を訪れた人へのおもてなしとして出しているそう。
取材の日は、まだ夏の名残を感じる暑さ。お話を伺う前に「ひと息いれてください」と出していただいたのが、ひんやりと冷やした「涼風葛湯」でした。

つるりとした口当たりが心地よい「涼風葛湯」-水木彩也子撮影
これは、普段通り熱湯でつくった葛湯を冷蔵庫で約40分冷やすだけ。ひんやりと、心地い甘さを感じられます。
冷たいココア葛湯はカカオの香りとほんのりとした甘さ。温めた牛乳で溶かすのもおすすめだそう。
地元の人が買い求める味
「桂花園といえば丁葛」というイメージを持っていた私にとって、印象に残ったのは店を訪れる人たちの姿でした。
取材中も、地元の方がひっきりなしに訪れます。お店の方と小気味よく言葉を交わしながら、それぞれにお菓子を選んでいく。
その様子を見ていると、桂花園は観光客がお土産を買うためだけの店ではなく、地域の人たちの日常の中にあるお菓子屋さんなのだと感じます。
そして、そんな地元の方々が買い求めていたお菓子のひとつが、梅の形をした、ころんと小さな最中です。
それが「小夜乃梅 ゆずっこ」。

丸みを帯びたやさしい梅のかたち-水木彩也子撮影
これは薄い最中の皮の中に、風味豊かなゆず餡がたっぷり詰まった一口サイズのお菓子です。
花びら一枚一枚がふっくらと浮かび上がる姿は、思わず見惚れてしまうかわいらしさ。紅白の姿も縁起がよく、お祝い事や年末年始のお菓子としても喜ばれているそうです。
そして食べてみると、ゆずの香りがふわっと広がります。甘さの中にゆずの風味がしっかり感じられ、もう一つ、と手が伸びる軽やかなおいしさです。
小さな最中に込められた手仕事
このゆず餡に使われているのは本ゆず。
一年の中でもっともおいしい時期の本ゆずをひとつずつ丁寧に剥き、すりおろして保存。それをゆず餡に仕上げています。機械は一切使わず、手作業でつくることを大切にしているそうです。
最中の皮も自家製。
そして今回、特別に見せていただいたのが、代々受け継がれている皮の焼き機。
この使い込まれた焼き機に、小さく切った餅を梅の型部分に入れてプレス。焼き機が一周ぐるりと回ると、梅の形をした最中の皮が焼き上がります。

梅の形をした焼き機-水木彩也子撮影
この薄く、さっくりとした皮は、自家製だからこそ出せる食感。しかも一口サイズの小さな最中なので、餡を詰めるのにも技術が必要です。

俳優・トラベルリポーター。
幼少期より俳優として活動し、テレビやCM、舞台など幅広い作品に出演。テレビ朝日系列『朝だ!生です旅サラダ』で海外リポーターを務めた後、日本一周の旅をきっかけに、旅や地域の魅力を伝える活動を本格化。現在は記事執筆やイベント出演など幅広く活動し、日本遺産ソムリエの知識も活かしながら、各地に息づく歴史や文化、その土地ならではの魅力を発信している。
旅先での本屋さん巡りが好き。
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