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EAT EAT EATで向かい合い会話を交わす取材協力者。館内の緑豊かな空間が背景に広がる。
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西前さんから思いがけない一言があった。

「カフェをご案内しますね」

予定にはなかった時間だった。

ニフレル館内のカフェ「EAT EAT EAT」。緑に囲まれた開放的な空間で来館者が食事を楽しむ。

「カフェをご案内しますね」。取材を終えたはずの午後、思いがけない時間がここから始まった。—Journal-ONE撮影

カメラを構えていたつもりが、いつの間にか席に着き、三人で向かい合うことになっていた。目の前のテーブルには、先ほど「どくにふれる」で見た「ふしぎなクラゲミルクティー」が置かれている。

「レモン汁がスポイトに入っているんですね」

西前さんがグラスを指差す。青く澄んだ液体に、小さな粒がゆらゆらと沈んでいた。

「これをこのブルーのところにこう垂らしていただくと、色が変化するんです。そういう仕掛けです」

ポトポトと、付属のレモン汁を垂らしていく。青は瞬く間に赤みを帯びていく。

「イメージはちょっと色鮮やかな赤みたいな、そんなイメージで」

西前さんが少し得意げに種明かしをしてくれる。写真を撮ろうとカメラを構えると、「あ、写真撮ってくれてる」と笑いながら付け加えた。

「結構どれも写真に収めたときに可愛らしく仕上がるように作ってもらっています」

EAT EAT EATで提供される「めぐるにふれるティーソーダ」。エディブルフラワーと泡をあしらったドリンク。

「めぐるにふれるティーソーダ」。ニフレル10周年の記念品として生まれ、その後商品化された人気ドリンク。—Journal-ONE撮影

「めぐるにふれるティソーダ―」の名を冠したドリンクにも、実は物語があるのだという。

「海の海藻と山の恵みをお茶とブレンドしたオリジナルのフレーバーで、京都のお茶屋さんと一緒に作ったんです」

「なんか木の味みたいな……ヒノキがそうだった」

西前さんが照れくさそうに笑いながら付け加える。目の前のグラスの中身が、急にただの飲み物以上のものに見えてくる。

もとは、ニフレル10周年の際に配られた記念品だったという。それがあまりに好評で、「これが美味しいのでそのまま商品に出せないか」という声から、正式なティーソーダとして商品化されるに至った。展示の余韻を持ち帰ってもらうための小さな仕掛けの裏には、こうした地道な積み重ねがあった。

「ちょっとここのお席からは見られないんですけど」

西前さんがふと窓の外を指差す。

「窓から太陽の塔がちょうど見えるようになっています」

言われて視線をやると、たしかにそこに、あの白い巨人が小さく顔を覗かせていた。1970年の熱狂を今に伝える塔と、その足元で「生きものの個性」を見つめ続けてきたニフレル。二日にわたって追いかけてきたテーマが、思いがけずカフェの一角で、静かに視界の中に重なり合っていた。

この街に、遠くから来る人たち

大阪モノレール車内から見た万博記念公園エリア。EXPOCITY方面へ向かう高架軌道が続く。

大阪モノレールから望む万博記念公園エリア。新大阪からもアクセスしやすく、遠方から訪れる来館者も増えている。—Journal-ONE撮影

新大阪からのアクセスの良さに話が及んだ。

「新大阪からも40分かからないぐらいで来れちゃうので」

西前さんがそう言うと、話は自然と駐車場の話題へと移っていった。

「4,400台ほど止められる巨大駐車場があって、平日は無料なんです。再開発が決まったとき、近隣住民の方との交通渋滞問題が一番センシティブな課題だったそうで、調整に時間をかけられたと聞いています」

華やかな展示の裏には、地域との丁寧な調整という、あまり語られることのない歴史が積み重なっていたのだと知る。

大阪・関西万博をきっかけに客層は変わったかと尋ねると、西前さんは即座に頷いた。

「明らかに割合が変わりましたね。テレビの取材で旧万博跡地と関西万博の両方に行く人へインタビューしたいという企画があったのですが、ちょうど仙台や神奈川からのご夫婦がいらしてバッチリでした」

西前さんが得意げに笑う。

万博開催をきっかけに、関東や東海からのお客様、ファミリー層が明確に増えているのだという。新大阪から新幹線でひと跨ぎ、その距離の近さを日々の仕事にしている身としては、他人事とは思えない話だった。

今回の取材が、1970年の太陽の塔と今年のEXPOの両方を巡り、55年を経てこの街がどう変わっていったかを追うものだと伝えると、西前さんは、うん、うん、と小さく相槌を打った。

「そういう風に地域に目を向けていただけるのはとても嬉しいです」

「ニフレルの建物もシンプルですが、万博のパビリオンをイメージして設計されています」

西前さんのその一言に、思わず箸を止めた。角のない白い曲面、あの独特のフォルム。ここまで見てきた建築の「素顔」が、単なる意匠ではなく、この土地の記憶そのものを内側に折り込んで設計されていたのだと知り、二日間の取材がひとつの線でつながっていくのを感じた。

■記者プロフィール
編集部-小谷
ナイトランが好きなインドア派。旅と朝カフェ、鮮魚コーナーを愛するJournal-ONE編集部員。メーカーでのアートディレクター・商品企画を経て、気づけばメディア運用側へ。
取材・文:
編集部- 小谷( 日本 )
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