
今津の打球はフェンス直撃のシングルヒットに-Journal-ONE撮影
加点する慶應義塾大学に、流れを止めた猪俣の好リリーフ
試合が終盤に入ると、緊張感はさらに高まった。慶應義塾大学は渡辺の快投で主導権を握っていた。しかし、東北福祉大学の反撃力を考えれば、1点リードでは安心できなかった。
両校の応援席からは声援が一段と大きくなり、球場は決勝戦さながらの熱気に包まれ試合は6回へ。
慶應義塾大学は今津が四球と二盗でチャンスをつくる。するとこの場面で、吉野太陽(4年・慶應義塾高)が甘い変化球を一、二塁間へ。これが適時打となり運んで追加点を奪った。渡辺も好投を考えると、この一打が試合の流れは一気に慶應義塾大学へ傾いていく。
しかし、昨年王者の東北福祉大学もこの状況を打破するべく、7回からエース・猪俣をマウンドへ送る。その結果、猪俣はベンチの期待に応えて2奪三振無失点で慶應義塾大学の勢いを止めてみせた。すると、試合は再び緊迫した展開へ戻っていった。

東北福祉大学の155㌔右腕・猪俣駿太-Journal-ONE撮影
渡辺の降板と東北福祉大の反撃
すると8回表、東北福祉大学の代打・藤原天斗(3年・八戸学院光星高)が右前打。ようやくチーム初安打を挙げた。さらに四球で走者をためて、ここまで抑えられていた渡辺に襲いかかった。
この場面で慶應義塾大は、快投の渡辺から広池浩也(4年・慶應義塾高)にスイッチ。すると、その隙を突いて東北福祉大学は、代走・向段泰一郎に(2年・創成館高)三盗を命じた。その結果、虚を突かれた慶應義塾大学。三塁手のカバーが遅れ、捕手の送球が逸れる間に向段が生還。東北福祉大学が1点を返した。
初安打から三盗まで。つまり、この一連のプレーが東北福祉大学に勢いをもたらし、試合の空気を一変させたのである。
一方で、渡辺は7回途中までに15奪三振という圧巻の投球を見せていたが、ここで降板となった。試合後、この場面について聞かれた渡辺が、上田コーチとのマウンド上でのやりとりを振り返る。
「続投する流れで話していた最後、”でも広池に代るからね”と言われて驚いた。」と記者の笑いを誘った渡辺。それでも、「序盤から飛ばしたこともあり、体力的にも広池に任せようと。」と続け、緊張感のある試合をチーム一丸で戦っていたことを知るエピソードを披露した。

渡辺降板が告げられた円陣-Journal-ONE撮影
慶應義塾大学の追加点と決勝への視界
しかし、流れを戻されかけた慶應義塾大学は、ここからさらに勝負強さを発揮する。
8回裏、大会屈指の好投手・猪俣に対し、小原と今津が連打を放つと、続く一宮知樹(2年・八千代松陰高)も一、二塁間に流して適時打。さらに、2死から連打と押し出しで一気に3点を加え、試合の流れを完全に引き戻した。
最終回、東北福祉大学も1点を返し食い下がる。しかし、慶應義塾大学は大学から投手転校した水野敬太(3年・札幌南高)が落ち着いた投球で後続を断ち切る。その結果、5年ぶりの決勝進出を決めた。

大学から投手転向の水野が火消し-Journal-ONE撮影
後続の投手たちの力投に敬意を表した渡辺。最後は「明日はリリーフとしていつでも行けるよう準備します。」と語り、全員野球で臨む決勝戦への覚悟を示した。
そして、決勝の相手は関西大学(関西学生野球連盟)に決まった。1972年以来となる両校の決勝対決は、まさに歴史が再び動く瞬間となる。加えて、東西の名門校が激突するこの試合は、在校生や多くのOBたちによる応援合戦も見物だ。
第75回大学野球選手権決勝は、野球ファン必見の一戦となるだろう。













