女子早明戦が映し出した5年間の軌跡
女子早明戦が、創部5年目を迎えた明治大学女子硬式野球クラブの歩みと、その先に広がる女子野球の未来を映し出した。
大学野球の聖地・明治神宮野球場では東京六大学野球秋季リーグ戦が熱戦を繰り広げるなか、女子野球にも新たな伝統が根付き始めている。
この特別な対抗戦は、東京六大学で唯一の女子硬式野球チームである明治大学女子硬式野球クラブが発起人となって実現したものだ。対するのは、早稲田大学唯一の女子野球同好会「WASEBI」。
女子野球の認知向上と大学女子野球の発展を目指して昨年産声を上げた女子早明戦は、今年さらに大きな意味を持つ舞台となった。
創部5年目。
ゼロから女子硬式野球チームを立ち上げた藤﨑匠生監督と選手たちが積み重ねてきた挑戦。その時間が、この日のグラウンドには確かに刻まれていた。

開会セレモニーで校歌斉唱‐Journal-ONE撮影
東京六大学に女子野球部がある未来を
試合後、藤﨑監督の言葉に真っ先に出てきたのは勝敗ではなかった。
「勝ち負け以上に、女子野球界の発展につながる試合を開催できたことに大きな意義を感じています。」
昨年に続く女子早明戦の開催。それは明治大学だけの挑戦ではない。
「早稲田と明治が対戦することで、女子野球の存在をより多くの方に知っていただき、大学女子野球の可能性を広げるきっかけになればと考えています。」
2022年、女子硬式野球クラブを立ち上げたとき、藤﨑監督の前には前例のない道が広がっていた。部員集めから始まり、活動環境の整備、対外試合の実現まで、その全てが挑戦だった。
それでも歩みを止めなかった。その先にあった夢を、藤﨑監督は今も追い続けている。
「いつか東京六大学に女子野球部が存在する未来を実現できるよう、これからも挑戦を続けていきたいです。」
今年の女子早明戦は、その未来へ向かう確かな一歩だった。

戦況を見つめる藤﨑監督(左)と4番・上村-Journal-ONE撮影
エース不在の窮地を救った小倉愛乃
この日の勝利を語る上で欠かせない存在がいる。小倉愛乃投手(3年・明治大学附属中野八王子高)だ。
チームは夏の選手権中に、エース・柴田優衣投手(2年・本荘高)を怪我で欠く苦しいシーズンを送っていた。
投手層の薄さは創部以来の課題でもある。その中で迎えた女子早明戦。
しかし、小倉投手はマウンドに立つと、ストライク先行のテンポの良い投球を展開した。一人ひとりの打者と丁寧に向き合いながら、打たせて取る投球で試合を組み立てていく。
そのリズムは守備陣にも伝わった。野手たちは落ち着いて打球をさばき、チーム全体に好循環が生まれる。
ピンチでも慌てることなく腕を振り続けた小倉投手は、最後までマウンドを譲らず完投勝利を挙げた。
そして試合のMVPを受賞。その価値は一つの勝利だけではない。エース不在の苦境の中、新たな柱となる可能性を示したことだ。
投手不足という課題を抱えるチームにとって、小倉投手の快投は未来を照らす大きな光となった。

女子早明戦でMVPに輝いた小倉(明大)-Journal-ONE撮影
「初めて」の全国大会で刻んだ成長
創部5年目となった今年、明治大学女子硬式野球クラブは大きな節目を迎えた。硬式野球の全国大会に初出場したのである。
藤﨑監督はその歩みをこう振り返る。
「初めて硬式野球の全国大会に出場し、新たな1ページを刻むことができました。選手たちの大きな成長を感じています。」
しかし、決して恵まれた環境ではない。
「練習環境やスポーツ推薦の有無、監督と選手の生活場所の距離など、決して恵まれた環境ではありません。」
だからこそ監督は選手たちに問い続けている。
「環境のせいにするのではなく、自分に何ができたのかを考える。その結果、自分自身に矢印を向けられるチームになってほしいと思います。」
スローガンは「おかげさま」。支えてくれる人への感謝を忘れず、勉強も野球も本気で取り組む。そんな姿勢が少しずつチーム文化として根付き始めている。

初の公式戦で新潟医療福祉大と対戦した明治大-Journal-ONE撮影

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- 取材・文:
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