アザラシは器用に口で魚をくわえると、くるりと180度回転させ、頭から飲み込んでいった。
来園者から驚きの声が上がる。
「魚のウロコは頭から尻尾に向かって並んでいます。頭から飲み込まないと喉に引っ掛かってしまうため、本能的にこうするんです」。
解説を聞きながら実際の行動を見ることで、来園者の理解は一気に深まる。旭山動物園のもぐもぐタイムは、単なる餌やり公開ではない。動物がなぜその行動を取るのかを学ぶ時間でもあるのだ。

行動を学ぶと動物を見る目も変わっていく-Journal-ONE撮影
生き物から環境問題へつなげる旭山動物園
そして近年、飼育員たちが特に力を入れて伝えているテーマがある。その一つが海洋プラスチックごみ問題だ。
アザラシのように魚を丸呑みする動物たちは、海に流出したプラスチックごみを誤って飲み込んでしまうことが少なくない。
「こうした動物たちを守るためにも、プラスチックごみを極力出さない社会にしていかなければなりません」。
飼育員の言葉には実感がこもっていた。
夏休み期間ということもあり、来園者の多くは家族連れだ。
それでも、
「プラスチックごみでアザラシさんが死んじゃったら、かわいそうだね」。
と子どもに話しかける保護者の姿があった。
動物を見る。楽しむ。そして少しだけ考える。旭山動物園が目指しているのは、そんな学びの入口なのかもしれない。楽しい夏の思い出が、親子で環境について考えるきっかけにもなる。
それはきっと、旅先だからこそ生まれる貴重な経験なのだろう。

旭山動物園では海洋プラスチックごみ問題の啓発も-Journal-ONE撮影
旭山動物園が全国の動物園に残したもの
「行動展示」よりも大切な考え方
全国へ広がった「行動展示」という言葉。
しかし今回、中田園長と園内を歩いて感じたのは、その言葉だけでは旭山動物園を語り切れないということだった。
展示の中心にいるのは、いつでも動物たちだ。人間の都合ではなく、動物たちがどう暮らし、どう行動するのかを考える。
その結果として、来園者は感動し、学び、生き物への興味を深めていく。
一方で、動物たちも来園者の様子を観察している節があると中田園長は話す。
「動物たちも、来園者の様子を興味深く見ているようです。春の閉園期間など、来園者がいない時期にはつまらなそうにする動物もいますよ」。
動物たちが本来の姿で過ごす。その結果、自分たちの住み家にやってきた来訪者に興味を持つ余裕が生まれているのかもしれない。

動物たちもこちらを気にしているかも(北海道産動物舎にて)-Journal-ONE撮影
旭山動物園で本当に好きな動物を見つけてほしい
ペンギンの散歩も、マリンウェイも、もぐもぐタイムも、すべての始まりは動物たちだった。だからこそ展示には無理がなく、生き生きとして見える。
「本当に好きな動物を見つけてほしい」。
取材の最後に聞いた中田園長の言葉が印象に残っている。
人気者を見るための動物園ではない。動物たちの本当の姿に出会うための動物園。旭山動物園が今も多くの人を引きつける理由は、そこにあるのかもしれない。














