旭川ビースターズが開催した中学生向け軟式野球大会「KEBOZ杯」。そこには野球の勝敗を超えた価値があった。
ウガンダ出身選手との交流、仲間との新たな出会い、そして地域全体で子どもたちを育てようとする大人たちの思い。スポーツが地域にもたらす力を、旭川ドリームスタジアムで目の当たりにした。
一見すると地域の野球イベントのひとつに見えるかもしれないが、そのグラウンドには今の日本社会が抱える課題と、それを解決しようとする地域スポーツチームの挑戦が詰まっていた。
子どもたちの笑顔。国境を越えた交流。廃校活用による地域再生。そして部活動の地域移行という全国的な課題への挑戦。
KEBOZ杯は単なる野球大会ではなかった。それは、旭川ビースターズが地域社会に提供する「新しいスポーツの価値」を象徴するイベントだった。

旭川ビースターズ KEBOZ杯に参加した中学生たち-Journal-ONE撮影
旭川ビースターズが描く“地域密着型スポーツチーム”の姿
旭川ビースターズは北海道旭川市を拠点とする独立リーグ球団だ。
NPBを目指す選手の育成はもちろんだが、この球団の特徴は地域との距離の近さにある。試合や野球教室だけでなく、地域イベントへの参加や企業との連携を積極的に行い、地域課題の解決にスポーツの力を生かそうとしている。
その象徴のひとつが、旭川市との包括連携協定のもとで運営されている「旭川ビースターズユース」だ。
現在、約25人の中学生が所属するユースチームは、近年全国的な課題となっている部活動の地域移行、いわゆる「地域クラブ化」の受け皿としての役割を果たしている。
興味深いのは、所属選手の全員が部活動の代替として参加しているわけではない点だ。
学校の野球部に所属しながら、さらに高いレベルの練習や実戦経験を求めてユースに通う中学生もいる。学校だけでは得られない経験を補完する場所としても機能しているのである。
少子化が進み、部活動のあり方が大きく変わろうとしている今、旭川ビースターズは地域のスポーツ環境を支える存在になりつつある。

旭川ビースターズ ユースの選手たち-Journal-ONE撮影
旭川ビースターズユースを支えるU・BOOMという新しいコミュニティ
その活動を支えているのが、屋内運動施設U・BOOM(ウ・ブン)。この施設は、かつて旭川市で廃校となった旧雨紛中学校を活用して誕生した。
旭川ビースターズユース代表を務める朝西史徳さんは、この旧校舎を買い取り、体育館を屋内練習場へと改修した。
しかし、それは単なる野球施設ではない。
北海道の長い冬を考えれば、子どもたちが思い切り身体を動かせる環境の確保は決して容易ではない。ましてや近年は部活動地域移行という大きな社会課題もある。
学校だけでは支えきれなくなりつつあるスポーツ環境を、地域全体でどう守るのか。朝西さんは、その答えを自ら施設を整備するという行動で示した。
現在、U・BOOMは旭川ビースターズユースだけでなく、トップチームの旭川ビースターズやサッカーなど他競技の団体も利用している。さらに校舎内には野球用品店やパーソナルジム、猫の爪とぎを製造販売する事業者なども入居している。
スポーツをする人も、買い物に来る人も、仕事をする人も集まる。かつて地域の子どもたちが学んだ学校は今、新しい形の地域コミュニティとして再生されているのである。

旧雨紛中の体育館は室内練習場へ様変わり-Journal-ONE撮影
旭川ビースターズとKEBOZ杯に込められた思い
そんな旭川ビースターズの活動に共感したのが、人気アパレルブランド「KEBOZ」だった。「地域の子どもたちのために何かしたい。」その思いが重なり、今回のKEBOZ杯が実現した。
会場となったのは旭川市内の野球場・旭川ドリームスタジアム。
大会には旭川ビースターズユースの選手に加え、一般募集で集まった中学生も参加。参加者は即席で3チームに分かれ、2日間にわたって熱戦を繰り広げた。
学校も住む地域も違う中学生たちが、初めて同じユニフォームに袖を通し、同じ目標に向かってプレーする。
それこそが、この大会最大の価値だったのかもしれない。

カスンバ選手を囲んだ様々なチーム帽の中学生たち-Journal-ONE撮影

- 取材・文:
- 編集部-矢澤( 日本 )












