旭山動物園は、動物たちの魅力だけでなく、その魅力を引き出そうと挑戦を続ける人たちに会える場所でもある。
では、その旭山動物園を率いる中田真一園長は、この場所の魅力をどのように考えているのだろうか。また、生まれ育った旭川への想いとは。
話を聞くと、その言葉の端々から動物へのまなざしと地域への愛着が伝わってきた。

旭山動物園のもぐもぐタイムでのホッキョクグマ-Journal-ONE撮影
旭山動物園の「行動展示」は後から生まれた言葉
旭山動物園といえば「行動展示」。
いまでは全国に浸透した言葉だが、中田園長によると最初からその言葉があったわけではないという。
「旭山動物園は、行動展示の動物園と言われています。しかし、最初はそういった言葉はありませんでした。動物たちが、自分たちの能力を最大限発揮できる獣舎をつくることに取り組んできました。その結果、皆さんが知らないことが多く見えるようになって、それが魅力になりました」。
展示の見せ方から発想したのではなかった。「この動物は本来どのように動くのだろう」という問いから始まったのだ。
その結果として、来園者は動物本来の能力や習性を目の前で見られるようになったのである。
前回の記事で感じた「動物が主役」の空気感は、まさにこの姿勢から生まれていた。

旭山動物園 象徴的な行動展示であるマリンウェイ-Journal-ONE撮影
子どもたちに伝えたかった“触れる体験”
園のリニューアルは大型動物の施設から始まったわけではない。出発点は「子ども牧場」だった。
「小さい動物を触って、やわらかいとか温かいとかを感じて、動物って生きているんだと思って欲しかったのです」。
毛並みの柔らかさ。体温の温かさ。命の存在感。
画面越しでは伝わらない感覚を、実際に体験してほしかったという。
「命の大切さもそうですが、自然に近い動物たちの行動を観れば、動物たちへの理解も深まる」。
動物を知ることは、自然を知ることでもある。その考え方は今も園全体に流れている。

行動展示の原点は小動物とのふれ合いだ-Journal-ONE撮影
旭山動物園の動物ファーストを貫く哲学
近年は北海道でも猛暑の日が増えている。旭川も例外ではない。
そんな環境変化に対し、現場では地道な工夫を重ねている。
「地球全体のことですから、旭山動物園も例外ではありません。ですが、いきなり投資もできないので、細かく動物たちの様子を見てあげて対策を取っています」。
例えば日よけを設置する。展示室と寝室を自由に行き来できるようにする。外よりは涼しい寝室へ動物が自ら戻れる環境を整える。
来園者から見えない時間が増える場合もあるが、その考えに迷いはない。
「来園者が見えなくなることは申し訳ないのですが、やはり動物ファーストで」。
人気や話題づくりよりも、まず動物たちの快適さを優先する。その一言に園の姿勢が凝縮されていた。

旭山動物園のぺんぎん館の室内部屋は見学ができる-Journal-ONE撮影
旭山動物園が育む、つながりの物語
動物園経営は決して容易ではない。それでも中田園長には譲れない信念がある。
「エサ代だけは絶対にケチらない」。
幸いなことに、地元の皆さんからの温かい支援がある旭山動物園。農家さんから規格外野菜や、加工場から出る端材をいただいて活用する。こうして、多くの地域事業者が動物たちを支えている。
さらに園内で伐採した木をペレット燃料として再利用するなど、持続可能な取り組みも進めている。
また、「あさひやま“もっと夢”基金」への寄付も増えているという。
「インターネットなどで全国から寄付をいただくことが大きいですが、園内の募金箱には様々な国の通貨が入っています」。
訪日外国人観光客の多さを象徴する旭山動物園らしいエピソードだ。しかし、それ以上に世界中の人々がこの園の活動に共感していることを示している。
そして、来園者もまた旭山動物園を支える大切な存在だ。園内限定のカプセルトイ「ASAHIYAMA Tiny ZOO」をはじめ、オリジナルグッズは多くの来園者に愛されている。通販サイトでも多彩なアイテムが並び、手に取った人それぞれが、旭山で過ごした時間の温度や景色を日常へそっと持ち帰っていく。


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旭山動物園
- 旭川空港 - 旭川空港線バス(37分)- 旭川駅 - 旭川電気鉄道バス(39分)- 旭山動物園停留所すぐ
- 取材・文:
- 編集部-矢澤( 日本 )













